「ハイブリッド回帰」は一時の逃避か? 本当に備えるべきは“エネルギー多様化”と“地政学リスク”への耐性だ

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ZEV規制撤回の波紋が広がる米国。最大7500ドルの税控除終了でBEV市場が揺らぐなか、日本メーカーはHV戦略への回帰と電動化投資の見直しを迫られている。政権交代リスク、インフラ遅延、国際競争力低下――政策依存の限界が今、問われている。

棲み分け再定義による成長軸

自動車(画像:Pexels)
自動車(画像:Pexels)

 カリフォルニアの動きは大きいが、米国全体の動向はなお不透明である。州ごとに方針が異なり、全国的なトレンドを読み解くのは難しい。自動車政策を巡っては、民主党と共和党の立場に大きな隔たりがあるため、政権交代による揺り戻しも激しい。

 共和党のトランプ政権はBEV義務化の撤廃を掲げている。一方、バイデン政権は「2030年までに新車販売の50%をクリーンビークル(BEV/PHV/FCV)にする」という目標を設定していた。民主党が政権を再び握れば、BEV普及に再びかじを切る可能性がある。

 一方で、欧州と中国はZEV規制の強化を独自に進めており、日系メーカーにとっては

「リスク分散が難しい構造的弱点」

が表面化している。各国の政策にどう対応し、グローバル戦略をどう描くかが、今後の経営課題となる。

 BEVとHVを競合ではなく「棲み分け」として再定義することが戦略上のカギとなる。新興市場ではHVが主力技術になり得る。例えばインドでは、2030年時点でも新車販売に占めるBEVの比率は15%程度にとどまる見通し(IEA)。価格と実用性の両立を求める市場では、HVが選ばれやすい。

 一方、中国はBEV先進国として確立されており、再び本格参入する余地もある。BYDやNioといった新興勢力に対抗できる次世代BEVを開発し、勝負をかける戦略も現実的だ。

 そのためには、国内外での新たなアライアンス形成も視野に入る。バッテリーやソフトウェアといったBEVの中核を担う分野での再編を通じ、グローバル競争を生き抜く体制づくりが求められる。

 低公害車の選択は、政策、地域経済、生活者の価値観によって変わる。正解はひとつではなく、市場ごとの特性に応じた棲み分け戦略が不可欠である。その上で、注力分野と撤退分野を柔軟に見極める姿勢が、持続的成長の条件となる。

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