「21世紀に間に合いました」 初代プリウスという名の97年の閃光――エコだけじゃないその神髄とは?

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東京都が2030年までに新車販売を非ガソリン車に切り替える方針を掲げ、電動化が加速している。1997年に初代プリウスが月産1000台で登場して以来、環境技術とデザイン価値の両立が市場拡大のカギとなっている。

静寂の走りと若者の熱狂

初代プリウス(画像:トヨタ自動車)
初代プリウス(画像:トヨタ自動車)

 21世紀の現在、「若者のクルマ離れ」が繰り返し語られている。しかし1990年代後半の若者にとって、クルマは背伸びしてでも手に入れる憧れの象徴だった。最新モデルに乗ること自体がステータスであり、話題性と自己表現の手段でもあった。

 そのなかで若者がプリウスに強い関心を寄せた理由のひとつが、世界初のHVでありながら驚くほど低価格だった点にある。1997年12月3日号の『SPA!』誌は、当時の衝撃をこう伝えている。

「常に「オレらが世界一」と威張っているメーカー、ダイムラー・ベンツもマッツアオ(原文ママ)になったという驚異の低価格、215万円(21世紀への語呂合わせらしい)で12月10日から売り出される革命的アレだ」

当時の感覚として、最先端技術を搭載したクルマが215万円という価格は非常に安いと受け止められていた。

 発売前後には、週刊誌各誌が一斉に試乗リポートを掲載。辛口で知られる媒体も、その乗り心地の新しさには驚きを隠せなかった。特に衝撃を受けたのは、エンジン始動から走行までの動作プロセスだった。

 それまでの試乗記事は、決まり文句のように「イグニッション(点火装置)を回してエンジンをかけると……」と始まる。エンジン音の擬音とともに加速していく描写が定番だった。しかしプリウスでは、それが完全に崩れた。イグニッションを回してもエンジンは唸らない。作動音も振動もない。むしろ“何も起きていない”ように感じるほどの静寂だった。だが、恐る恐るアクセルを踏み込むと、驚くほど静かにクルマが動き出した。この未来的な挙動は、

「未来的巡航」
「座席付き動く歩道」

といった言葉で各誌に表現された。プリウスの登場は、単なる新車発表ではなく、未来のモビリティが現実に一歩近づいた瞬間だった。

 当時の記事に共通しているのは、HVが環境配慮型のクルマであることを強調しつつ、それに留まらない点だ。世界初の先進技術を搭載しながらも、乗り心地や操作性が優れ、

「かっこいい」

と注目されたクルマとして評価されていた。これが現代との大きな違いといえる。

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