トヨタ「KINTO専用グレード」は成功か失敗か――年間67万台超のカーリース市場、限定戦略」を再考する
購入可能な層が、あえて所有しないKINTOを選ぶ理由とは何か。bZ4X専用化戦略の失速が浮き彫りにしたのは、「借りる」ことの価値設計の限界だ。利用台数67万台超の拡大市場で、サブスクが乗り越えるべき壁が見えてきた。
選択を揺さぶる限定性能
サブスクには制限がある。問題は、その不自由を超えてでも選びたくなる何かがあるかどうかだ。
例えば、かつてKINTO限定で登場したGRヤリスの「モリゾウセレクション」がある。このモデルはWRCのフィードバックを反映し、走行制御ソフトの継続的なアップデートを受けられる仕様だった。モリゾウ氏(豊田章男・トヨタ自動車代表取締役会長)のサインが入ったウィンドシールドガラスや、特別配色のパーツなど、車好きの心をくすぐる要素が詰め込まれていた。
また、現行プリウスのKINTO専用グレード「U」は、シリーズの中で最も優れた燃費性能を持つ。コストパフォーマンスや環境性能を重視する層にとって、KINTOを選ぶこと自体が、数字上の合理性につながる。
これらの事例が示すのは、KINTOというチャネルが、単なるサブスクや車の持ち方の一形態ではなく、ここでしか得られない車を提案し始めているという点である。ただし、どれほど魅力的な仕様であっても、制限つきであるという事実が、選択の最後の一歩をためらわせる可能性もある。
・所有の自由
・KINTOにしかない価値
その間で揺れるのは、価格や性能だけではない。どう車を手に入れるかを自ら選ぶユーザー自身の姿勢である。