トヨタ「KINTO専用グレード」は成功か失敗か――年間67万台超のカーリース市場、限定戦略」を再考する

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購入可能な層が、あえて所有しないKINTOを選ぶ理由とは何か。bZ4X専用化戦略の失速が浮き彫りにしたのは、「借りる」ことの価値設計の限界だ。利用台数67万台超の拡大市場で、サブスクが乗り越えるべき壁が見えてきた。

67万台突破が示す利用拡大

 音楽や動画配信などのサブスクリプションサービスが広がり、消費スタイルは変わった。必ずしも購入して所有するのではなく、自分に合った方法で賢く利用することが主流になりつつある。この流れは自動車でも例外ではない。

 ここ10年、個人向けカーリース市場は拡大し続けている。日本自動車リース協会連合会(JALA)によると、2015年以降、個人向けリースは前年同期比で増加を続け、2024年には利用台数が67万1404台に達する見込みだ。

 一般にカーリースや車のサブスクは、購入よりも初期費用が少なくて済む。税金や自賠責保険料などの法定費用、サービスによっては維持費もリース料に含まれている。車は特に新車だと高額な買い物になるため、少ない負担でカーライフを始められるのは魅力だ。維持費が定額化されているため、車検時や自動車税納付時に大きな出費が発生しにくい。

 KINTOは充実したサービスが売りだ。リース料金には法定費用だけでなく、

・車検や消耗品交換
・ロードサービス
・故障修理や代車
・任意保険料

も含まれている。ただし、車はあくまでも借りているもので、返却が原則だ。最近は最後に車がもらえるサービスも登場しているが、基本的には返却が前提となっている。

 返却が前提のサービスでは、車の使用に制限がかかる。過度な傷や汚れは禁止で、走行距離にも制限がある。原状回復できないカスタマイズも認められない。レンタカーと違い、いつでも好きなときにマイカーのように使えるというメリットはあるが、購入車とまったく同じように制限なく使えるわけではない。

 そのため、手元に資金があり維持費も気にしない購入意欲の高い層は、制約があるサブスクをあえて選ばない傾向がある。

 しかし、一般購入ができない、KINTOでしか選べない仕様や車がある場合、購入意欲・購入力のある層が自由を犠牲にしてでも得たい価値がそこにあるのかが問われる。

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