埼京線十条駅前にそびえる「明るい廃墟」 なぜ開業1年で“テナント半数空室”なのか? 哲学なき再開発が招いた虚しさと喪失

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十条駅前に誕生した「ザ・タワー十条」は、1億円超の住戸と複合商業施設を擁する再開発の象徴だ。しかし開業1年未満でテナントは半数が空室、坪3万円近い賃料と導線不備が足を引っ張る。防災目的の再開発が「明るい廃墟」へと転じた現実が、東京の都市再生に警鐘を鳴らす。

北区防災再開発の矛盾点

ジェイトモール(画像:宮田直太郎)
ジェイトモール(画像:宮田直太郎)

 十条のジェイトモールは開業間もないが、テナントの空きが目立ち、悲惨と呼んでも差し支えない。

 再開発自体は防災対策として不可欠な課題である。北区の駅前は古い木造建築が多く、火災リスクが高い。道幅も狭く、消防車の進入が難しいケースも少なくない。首都圏直下地震の危険性を考慮すれば、再開発は急務だ。

 しかし、防災目的の再開発とはいえ、開業1年未満でテナント半数近くが空きの現状を見ると、その意義に疑問を抱く声があっても不思議ではない。

 現在、東京では隣接する赤羽、立石、大山など古い商店街や歓楽街の再開発が進んでいる。古い街並みが消えることは寂しいが、地震対策を考えればやむを得ない部分もある。

 ただ、新たに建設される施設がジェイトモールのようにテナント集積や来客回遊が難しい構造ならば、厳しい意見を述べるべきだろう。

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