埼京線十条駅前にそびえる「明るい廃墟」 なぜ開業1年で“テナント半数空室”なのか? 哲学なき再開発が招いた虚しさと喪失

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十条駅前に誕生した「ザ・タワー十条」は、1億円超の住戸と複合商業施設を擁する再開発の象徴だ。しかし開業1年未満でテナントは半数が空室、坪3万円近い賃料と導線不備が足を引っ張る。防災目的の再開発が「明るい廃墟」へと転じた現実が、東京の都市再生に警鐘を鳴らす。

反対運動を乗り越えた市街地再開発

1985年の十条駅西口(画像:国土地理院)
1985年の十条駅西口(画像:国土地理院)

 ジェイトモールを含むこの一帯は、十条駅西口地区の第一種市街地再開発事業の一環として整備されたものである。

 もともと十条駅西口周辺は、十条西口商店街や木造住宅が密集し、十条銀座と同様にレトロな雰囲気が色濃く残る街だった。

 しかし駅前にもかかわらず、道路幅は狭く車両や歩行者の通行に危険をともなっていた。消防車などの緊急車両の進入も困難で、防災面で課題を抱えていた。このため、道路拡幅や駐車場整備を進め、駅前広場の交通アクセスの円滑化と歩行者の安全確保を目的に再開発が進行した。

 2007(平成19)年に再開発準備組合が設立されたが、住民の反対運動に直面しつつも土地収用が進められた。

 設立から10年後の2017年、東京都知事の許可を得て十条駅西口地区市街地再開発組合が設立され、既存建物の解体が始まった。その後、2021年に再開発ビルの着工が行われ、2024年に竣工を迎えた。

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