埼京線十条駅前にそびえる「明るい廃墟」 なぜ開業1年で“テナント半数空室”なのか? 哲学なき再開発が招いた虚しさと喪失
十条駅前に誕生した「ザ・タワー十条」は、1億円超の住戸と複合商業施設を擁する再開発の象徴だ。しかし開業1年未満でテナントは半数が空室、坪3万円近い賃料と導線不備が足を引っ張る。防災目的の再開発が「明るい廃墟」へと転じた現実が、東京の都市再生に警鐘を鳴らす。
27区画に15店舗の実態

しかし期待されたジェイトモールは、都心の商業施設とは思えないほど閑散としている。
筆者(宮田直太郎、フリーライター)が2025年5月に訪れた際、1階の案内図には27区画のテナントがあるはずだったが、実際に入居していたのは15店舗ほどにとどまっていた。駅の反対側の道路沿いは全く店舗が入っておらず、開業から1年も経たないのに早くも寂れた印象を与えている。
2階はさらに状況が悪い。12区画のうち、入居しているのは核店舗の高級スーパー「クィーンズ伊勢丹」を含めて5テナントだけで、そのうちひとつは準備中の状態だ。区画によっては真新しい床と壁だけが広がり、中身が何もない空間もある。
本当に2024年に竣工した施設かと疑いたくなる光景である。実際、筆者の訪問時には「何もないな」と話す声も聞かれ、住民の間では早くも
「明るい廃墟」
と揶揄される雰囲気が感じられた。