なぜBYDは「最大34%値下げ」に踏み切るのか? EV王者を追い詰める“飽和する7万元市場”の深層、BYD株続落で考える

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2日で株価10%超下落――BYDが最大34%の異例値下げに踏み切った中国EV市場。販売台数は前年比増でもシェアは急落し、過剰供給と価格競争の袋小路へ。政策支援の後退と需給ギャップが招く「家電化」の兆候を前に、問われるのは成長ではなく、持続可能な経営の体力だ。

中堅EVメーカー淘汰の連鎖

マスキー法をクリアしたCVCCエンジンを搭載したシビック。1974年モデル(画像:本田技研工業)
マスキー法をクリアしたCVCCエンジンを搭載したシビック。1974年モデル(画像:本田技研工業)

 メーカー各社は、値引きによる販売促進策に躍起になっている。短期的にはシェア拡大や在庫圧縮といった効果が見込める。しかし、値引き販売が常態化すれば、収益に直接的な悪影響を与える。価格競争の出口は見えていない。

 過去にも値下げの連鎖は、業界に厳しい結末をもたらしてきた。1970年代の米国では、GM、フォード、クライスラーのビッグスリーがシェア争いを展開。石油危機の影響で市場が冷え込むなか、各社は値下げ合戦に陥った。その隙を突いたのが、日本からの安価で高性能な車両だった。日本車は市場を席巻し、米国内では日本車バッシングが起きた。このときの構図は、現在の中国EV市場と重なる部分が多い。

 価格下落の連鎖は、サプライチェーンにも深刻な影響を与える。電池、原材料、素材、物流など、あらゆる分野でコスト圧力が強まっている。結果として、供給側では淘汰が進行中だ。EVメーカーも例外ではない。特に中堅以下の企業は、市場から排除されるリスクが高まっている。

 本来、販売価格は技術革新によって徐々に下がっていくものだ。そこには学習効果や量産効果、設計の最適化といったプロセスが作用する。しかし現在の価格下落は、そうした積み上げによるものではない。企業が損益分岐点を割ることを承知のうえで実施する、“逆転型コスト構造”の産物である。

生産と販売のあいだに確かな需要の裏付けがなく、出荷台数を過剰に演出することで企業価値を取り繕う。この行為は、かつてのバブル経済に見られた近視眼的成長指標への依存と酷似している。

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