「コンパクトSUV」が選ばれる根本理由! 止まらぬ「ちょい高級」化、手の届く贅沢に熱視線の現実
「所有の再定義」と若年層の支持

この傾向の背景には、いくつかの社会的・経済的要因がある。
第一に挙げられるのが、若年層、とりわけ20代を中心とした都市生活者の増加だ。都市部では、日常の買い物や街乗り、さらには駐車スペースの制約から、大型車よりも小型車が選ばれやすい。30代以降になると、社会経験を経てライフスタイルが変わり、自動車が必要となる場面も増える。渋谷や梅田の中心部に居を構えない限り、自家用車の利便性は高い。
一方で、カーシェアリングなど「所有しない」選択肢が浸透した現在でも、クルマを持つことの喜びは根強く残る。自動車がかつてのようなステータスシンボルでなくなった今でも、その価値は消えていない。使いやすさと所有の満足感。その両立を求める声が、極端なサイズや特徴を避けたちょうどいいスタイルを生み出したと考えられる。
人口構造の変化も無視できない。少子高齢化が進む日本では、かつて主流だった大家族向けの大型車の必要性が薄れてきた。求められているのは、三列シートや大容量ラゲッジではなく、少人数が快適に過ごせる上質な空間である。
さらに、環境への意識の高まりも重要な要素だ。燃費性能や二酸化炭素排出量への関心が高まるなか、小型車の選択が合理的な選択肢となっている。たとえばトヨタの「ヤリスクロス」は、ハイブリッドモデルでリッター26.0kmという高い燃費性能を実現している。
コンパクトSUVが支持を集めるのは、環境配慮の視点からも納得できる現象だ。もちろん、価格の面でも強みがある。高級感ある内装を備えながら、手の届く価格帯を維持している点は大きな魅力となっている。ホンダの「WR-V」は、239~258万円という価格で上質な装備を提供している。
こうした背景のもと、「ちょうどいい贅沢」という新たなポジションが市場に形成されたといえる。