超高級SUV、本当に必要? なぜ「オフロード」にこだわる? 「走破性」という名の過剰スペック、富裕層を魅せる美学とは
必要以上の贅沢が創る優越感

トヨタ・ランドクルーザーやメルセデス・ベンツ・Gクラスは、オフロード走破性を重視したSUVだ。これらの車は砂漠や雪原、未舗装の山道などの過酷な環境で走ることが想定されており、軍やレスキューでも使われるほどの耐久性と信頼性を持っている。つまり、走れるだけでなく、走らなければならない場面が確かにあるのだ。
一方、カリナンやベンテイガはショーファーカー的な要素を持ち、オフロードを実際に走ることはほとんどない。ランドクルーザーのように過酷な環境で走ることは想定されていないが、それでも走破性を備えていることが価値を高める。富裕層はこの
「スペックを所有する優越感」
に満足し、ブランドはその価値を演出する。
ロールス・ロイスやベントレーが発信する、オフロードでも優雅に移動できるというメッセージは、実際に悪路に行くことを推奨しているわけではない。それはラグジュアリーかつ汎用性も備えているという余裕を見せるための誇張であり、そのことが高級イメージを生んでいる。ショーファーカーとしての役割がメインでも、本格的な走破性の予感を漂わせる。それがこのジャンルにおける美学だ。
ラグジュアリーSUVにおいて走破性は、もう使うための装備ではない。それは見えない万能感という概念へと変わった。
ショーファーカーのような贅を尽くしたSUVが本当に必要かと問われれば、確かに必要ではないと感じる人もいるだろう。しかし、ラグジュアリーは必要性ではなく、
「あったほうが人生が豊かに感じるか」
という価値観で選ばれるものだ。
使わない走破性を備えたSUVを所有する事実そのものが、従来のショーファーカーにはなかった新しいラグジュアリーの価値を生み出している。それは、従来の秘された余剰とは異なり、見せる余裕としてのラグジュアリーの形だ。
真のラグジュアリーがどこに宿るのかを問うこと自体が、愚かなことかもしれない。