新幹線が「貨物列車」に大変身!? JR東日本「はこビュン」事業拡大で年間100億円狙う! ただし「一方通行」問題の解決どうする?
地方発荷物の新輸送モデル

はこビュンは順調に成長を続けているが、ひとつ課題がある。それは、いわゆる
「一方通行」
の問題である。象徴的なのが、前述のトライアルで明らかになった「上り約700箱、下り約100箱」という輸送量だ。東北、北陸、長野など地方から首都圏への輸送には送れるものが無数にあるが、逆に東京を中心とする首都圏から地方へ向けて送れるものは極端に少ない。まるでふるさと納税のような状況だ。
現在、JR東日本グループはこの一方通行を大きな課題とは捉えていないが、上り・下りでの需要の偏在は、交通業界全般に共通する課題でもある。これまでのスキマビジネスとは異なり、専用列車を運行するとなると、荷物を満載した上り列車の後に、回送状態に近い下り列車を運行せざるを得なくなり、結果的に大きなスキマが生じる可能性がある。
この課題を解決するために考えられるのが、首都圏発の荷物ではなく、地方発の荷物を首都圏で載せ替え、他の地方へ輸送する取り組みだ。実際、2023年9月に実施したトライアルでは、長野の車両基地から東京の車両基地へ向けた多量荷物輸送の一部を東京駅で載せ替え、東北方面へ輸送した。また、2024年3月のトライアルでは、新潟駅から東京駅間の荷物輸送の一部を東京駅で載せ替え、東海道新幹線を利用して名古屋駅へ輸送した。
ただし、これらのトライアルは、載せ替えを車両基地ではなく、東京駅のホームで行ったため、裁ける荷物の量には限界があり、一方通行を大きく是正するレベルには至っていない。しかし、東京の新幹線車両基地では、下り方面への輸送対応として、車両基地内の既存機材(フォークリフトやターレットトラックなど)を活用し、省力化を実施している。これにより、載せ替えを伴う多量荷物輸送については、車両基地を利用することで輸送量をさらに拡大する余地がある。
JR東日本グループの2023年度の連結収益は約2兆7300億円。グループ全体のはこビュンの目標収益は100億円で、これは全体収益の
「273分の1」
に過ぎないが、載せ替え輸送を含む新たな輸送ニーズの拡大や、ひっ迫するトラック輸送への対応、CO2削減という社会的要請を考えると、今後の伸びしろは大きいだろう。