ひび割れが50分で自然に治る! どういう仕組み? 英国発「自己修復するアスファルト」が日本のインフラ老朽化問題を救う? 英大学チームがGoogleのAIで発明
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埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道管の老朽化とインフラ維持の課題を浮き彫りにした。約120万人に影響を及ぼしたこの事故を機に、持続可能な道路整備の必要性が高まっている。そんな中、AIと植物由来の新素材を活用した「自己修復アスファルト」が注目を集める。ローマ時代の技術にも着想を得たこの革新技術が、道路メンテナンスの概念を変える可能性を探る。
交通インフラの老朽化は大きな課題

日本では少子高齢化が進み、人口減少が続くなか、高度経済成長期に建設された交通インフラの老朽化が全国で加速している。
2012(平成24)年に発生した笹子トンネル崩落事故では9人が死亡し、翌2013年は「社会資本メンテナンス元年」と位置づけられた。これを機に道路法が改正され、点検基準の法定化や国による修繕代行制度が創設された。国土交通省も定期点検をはじめとする対策を徹底してきたはずだったが、それでも八潮市で事故が発生した。
公道の建設や維持管理には当然ながら税金が投入される。限られた財源のなかで最大の成果を生み出すには、効率的な運用が求められる。
道路メンテナンスの手法として、AIを活用した路面診断があるが、それ以前に劣化しにくい素材を採用するのは合理的な選択だ。道路の耐久性が向上すれば維持費用の削減につながる。自己修復機能を持つ新型アスファルトを活用すれば、メンテナンス負担の軽減が期待できる。実用化にはまだ時間を要するが、今後の検討に値する技術だろう。
「交通に危険はつきもの」と片付けるのは簡単だ。しかし、未来の世代が悲劇的な事故に巻き込まれることがないよう、可能な限りリスクを減らし、交通インフラを整備することこそ、現代を生きる私たちに課せられた責務ではないか。