ひび割れが50分で自然に治る! どういう仕組み? 英国発「自己修復するアスファルト」が日本のインフラ老朽化問題を救う? 英大学チームがGoogleのAIで発明

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埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道管の老朽化とインフラ維持の課題を浮き彫りにした。約120万人に影響を及ぼしたこの事故を機に、持続可能な道路整備の必要性が高まっている。そんな中、AIと植物由来の新素材を活用した「自己修復アスファルト」が注目を集める。ローマ時代の技術にも着想を得たこの革新技術が、道路メンテナンスの概念を変える可能性を探る。

植物油が溶け出して路面の傷を修復

壊れた道路のイメージ(画像:写真AC)
壊れた道路のイメージ(画像:写真AC)

 舗装道路には、低温で固体になり、高温で液体に変わる黒っぽい色のアスファルトが使用されている。しかし、

・交通量の増加
・季節の変化
・時間の経過

によって劣化が進み、ひび割れが発生する。そこに水が浸入すると、亀裂はさらに拡大し、道路の損傷が深刻化していく。

 小さなひび割れでも、歩行者や自転車にとっては転倒のリスクとなる。一般的な修復方法としては、アスファルトシーラーを流し込み、隙間を埋める処置が行われる。この方法なら大規模な改修工事は不要だが、二輪車にとっては滑りやすくなるという新たな課題も生じる。

 こうした問題を解決するため、道路が自ら亀裂を修復する新型アスファルト素材を、英国のキングス・カレッジ・ロンドンやスウォンジー大学の研究チームが開発した。植物や動物が傷を自然に治す仕組みをヒントに、Google CloudのAIを活用してアスファルトの化学的相互作用を解析。その結果、植物由来の特殊なリサイクル油を混合したハイブリッド素材が誕生した。この素材は、細かい亀裂が発生すると油成分が溶け出し、約50分で自己修復する。

 研究成果は、米国化学会の学術誌『Applied Materials & Interfaces』に発表された。さらに、自己修復機能を持つサステナブルなコンクリートの研究も進行中だという。

 実は、こうした技術の着想となる例は古代ローマにも存在した。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、スイスの研究機関による共同研究チームが、約2000年もの間崩れることなく現存するローマ遺構の組成を調査。その結果、ローマ時代のコンクリートには自己修復機能が備わっていたことが判明した。上下水道や公衆浴場まで完備された都市を築いたローマ人の土木技術は、現代の技術革新にも通じるものがある。「すべての道はローマに通ず」という言葉の奥深さを改めて実感させられる。

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