「どうせ自分なんて」 運送会社の社員はなぜ“自己肯定感”が低いのか? 業界構造に潜む危機に迫る

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運送従事者は頭が悪い──こういった書き込みが、Yahoo!ニュースのコメントなどで散見される。そんなことはない。運送従事者には地頭の良い人が多いと筆者は思う。足りないのは、地頭の良さをビジネスに活用するテクニックだ。

意見が言えない運送会社

荷主からの無理難題に応えざるを得ないことも(画像:写真AC)
荷主からの無理難題に応えざるを得ないことも(画像:写真AC)

 今は多少事情も変わってきたが、以前の運送会社は、荷主の要望に対し、「ハイ、分かりました!」と盲目的に従うことを求められてきた。待機を命じられれば何時間でも待ち、時間指定配送には残業してでも対応する。過積載と分かっていても、甘んじて受け入れざるを得ない状況すらあった。

 10年ほど前、ある運送会社において業務改善のアドバイスをしていたときのことだ。

 問題となっていた業務プロセスは、どう考えても荷主のわがままが問題だった。「気が付かなかったんですか?」──問うた筆者に、担当者は「言われてみればそうですね……」とポカンとするだけだった。

 筆者は荷主に改善要求をすることを提案した。担当者は喜んだ。だが、役員が「余計な知恵を吹き込まないでください!荷主に嫌われたらどうするんですか?」と猛反対してきた。

 運送業界特有の問題もある。

 国内にある運送会社約6万2000社の71.6%が従業員数20人以下であり、従業員が1000人を超えるのはわずか68社、割合にして0.1%しかない。運送業界は、中小企業・小規模事業者の巨大な集合体なのだ。

 従業員数の違いは、多様性の違いでもある。従業員が20人の会社と、1000人の会社では、従業員同士が切磋琢磨(せっさたくま)し成長できる機会も大きく異なってくる。

 さらに運送会社の場合、限られた数の荷主と何年も仕事をしているケースも少なくない。同じことを、何年も同じように繰り返していれば、おのずと考えるチカラも落ちてくる。

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