「どうせ自分なんて」 運送会社の社員はなぜ“自己肯定感”が低いのか? 業界構造に潜む危機に迫る

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運送従事者は頭が悪い──こういった書き込みが、Yahoo!ニュースのコメントなどで散見される。そんなことはない。運送従事者には地頭の良い人が多いと筆者は思う。足りないのは、地頭の良さをビジネスに活用するテクニックだ。

自身の「頭の良さ」に驚いた営業所長

ある運送会社で見た象徴的な出来事とは(画像:写真AC)
ある運送会社で見た象徴的な出来事とは(画像:写真AC)

 筆者が定期的に出入りしていたある運送会社におけるエピソードである。

 顔なじみの営業所長が、珍しく本社に来ていた。浮かぬ顔の彼に声をかけると、「安全キャンペーンのポスターに悩んでいまして……」と言う。企画した安全キャンペーンの社内掲示用ポスターのデザインが思い浮かばないようなのだ。

 ポスターデザインに大事なのは、安全スローガンに対する補足効果である。掲げた安全スローガンに対し、デザインを見ることで、従業員全員のスローガンに対する理解が進むことが求められる。

 その点、所長の安全スローガンに対する理解と目的意識は完璧だった。足りなかったのは、それを言語化するテクニックと、デザインに反映させるテクニックである。筆者は、所長に質問を行い、ブレインストーミングしながら、ポスターのラフスケッチ案を複数作り上げた。

 行っていたのは本社の食堂である。休憩中の倉庫作業員からドライバー、役員まで、次第に集まってきた。ラフスケッチを一つ作るたびに、周囲からは歓声が上がった。周りの人々からすると、魔法でも見ているような気分だったのかもしれない。

「これ、私のアイデアから生まれたデザイン案ですか!?」──少し興奮したように、所長は言った。「そうですよ」と応えた筆者に、所長はこのように言った。

「私の頭の中に、このデザインの素があったなんて! 感動しました」

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