「パンデミックの悪夢」では終わらなかった! コロナが海運業界にもたらした試練とは? コンテナ不足・運賃高騰…貿易額過去最高の裏側を考える
新型コロナが海運業界に与えた影響

パンデミック初期、世界各国で人の移動が制限され、世界経済が停滞したことで生産や消費が減少し、貿易量が大幅に縮小した。港湾では検疫措置や労働者不足の影響で船舶の入出港が遅れ、貨物の積み下ろしにも支障が生じた。その結果、港湾の混雑や輸送遅延が業界全体に波及した。その後、いわゆる「巣ごもり需要」の増加や北米西岸をはじめとする主要港での滞船が影響し、世界的に海上コンテナ輸送の需給がひっ迫。輸送遅延や輸送スペースの不足といった問題が発生した。
クルーズ業界も大きな打撃を受けた。クルーズ船内で感染者が発生する事例が相次ぎ、多くの国が入港を拒否。国内でも横浜や長崎に停泊したクルーズ船での感染拡大が大きな話題となった。その影響でクルーズ会社は運航を停止し、業界全体で数十億ドル規模の損失を計上。外航旅客船の定期航路事業では、日韓航路の旅客輸送が1年以上休止され、邦船社のクルーズ事業も緊急事態宣言の発出時には運航を中止。国際クルーズに至っては、事業者が運休に追い込まれた。
船員交代の問題も深刻化した。パンデミックによる国際的な移動制限で多くの船員が乗り換えできず、下船も本国への帰還もできない状況に陥った。ピーク時には約40万人の船員が契約期間を大幅に超えて勤務。この問題は労働環境を悪化させ、船員のメンタルヘルスや安全にも大きな影響を及ぼした。
コンテナ不足と運賃高騰も深刻な問題となった。世界のコンテナ生産の98%を担う中国では、米中貿易摩擦に加え、パンデミックの影響で生産量が落ち込んだ。しかし、中国は他国に先駆けて経済活動を再開し、それにともない輸送量が増加。さらに、北米や欧州では「巣ごもり需要」の拡大により輸送量が急増したことで、世界的なコンテナ不足が発生した。港湾では荷役作業員の不足も影響し、入港後の作業が遅延。コンテナが積み下ろし先で滞留し、世界的な供給不足がさらに深刻化した。その結果、輸送コストが急上昇し、コンテナ運賃は過去最高水準に達した。
造船業界も厳しい状況に追い込まれた。船の建造には長い工期が必要なため、造船所では通常2年程度の手持ち工事量を確保している。しかし、海外展示会の中止などで新規商談が滞り、手持ち工事量は1年程度まで落ち込んだ。操業を維持するため、赤字案件であっても受注せざるを得ない状況に追い込まれた。