ホンダとソニーが提携 異業種の「越境事業」は社員のキャリア形成に役立つのか
CASEが生み出す多くの越境機会

これらのように、新しい事業を機に異業種間の越境が生じるのは今に始まったことではない。
1996(平成8)年の金融ビッグバンでは、銀行でも保険や投資信託の販売が行えるようになり、2001年にはコンビニなどを運営するセブン&アイ・ホールディングスが銀行業に参入した。家電量販店から始まったヤマダホールディングスは「暮らしまるごと」を掲げ、住宅や家具・インテリア、金融などの事業に進出している。これまでもそうやって新しい事業を機に異業種間の越境機会が生まれる度、一本道のキャリアに縛られていた社員たちは新たな選択肢を獲得してきた。
新しい事業をきっかけとする異業種間の越境はこれからもさまざまな分野で生じる可能性がある。EVや空飛ぶクルマなどのモビリティ業界は、最も活発に越境機会を生み出している分野のひとつだ。中でも自動車産業が取り組むCASEから、今後も多くの越境機会が生まれることが期待される。
CASEとは、
・Connected(つながる)
・Autonomous(自動運転)
・Shared & Service(シェアリングとサービス)
・Electric(電動化)
の頭文字で、自動車産業の動向を示す重要キーワードだ。
例えばC(Connected)やA(Autonomous)においては、自動車にとりつけたセンサーなどから得られる車両本体の情報を生かすだけでなく、前後にいる車両や周辺の道路状況といったさまざまな情報とネットワークでつなぐことが必要になる。そこで生じるのは、自動車メーカーとIT企業との間の越境機会だ。
またS(Shared & Service)においては、自動車メーカーとカーシェアリングなどのサービス会社や土地活用に携わるデベロッパーなどとの間の越境、E(Electric)においては、自動車メーカーと電池開発に携わる電機メーカーや充電器設備の施工会社などとの間に越境機会が生じることになる。
これらの越境機会が働き手たちに新たな選択肢を提供すればするほど、キャリア形成の幅や可能性が広がっていく。