いすゞ5月本社移転も 横浜の自動車産業「集積地化」を阻むものの正体
自動車業界で横浜市に本社を移転したり、研究開発施設を新設したりする動きが相次いでいる。日本企業には斬新なイノベーションが求められている。
大手が次々と移転
自動車業界で横浜市に本社を移転したり、研究開発施設を新設したりする動きが相次いでいる。日産自動車は2009(平成21)年、本社を東京都中央区から横浜市みなとみらい地区に移した。いすゞ自動車(東京都品川区)も、この5月に本社を都内からみなとみらい地区に移す。
完成車メーカーだけではない。自動車部品で世界最大手の独ボッシュの日本法人(東京都渋谷区)は、2024年に本社を横浜市都筑区に移すとともに、近郊に分散していた研究拠点を集約する。ほかにも京セラが2019年に、村田製作所が2020年にみなとみらい地区に研究開発施設を設置しており、こうした動きが今後も続きそうだ。
今回は、産業振興において重要なクラスターという概念を確認した上で、横浜市は自動車クラスターに発展するのか、という点について考えてみたい。
クラスターとは何か
横浜の今後を占う前に、クラスターという考え方を確認しよう。
クラスターというと、日本ではコロナ禍で最悪の印象になってしまったが、産業振興の重要な概念である。クラスターは、産官学が協力しイノベーションの創造を目指す産業集積を意味する。経営戦略論の大家マイケル・ポーターが提唱した。
日本でも全国各地に産業集積(産地、企業城下町)があるが、クラスターは一般の産業集積と目的が大きく異なる。
一般の産業集積が調達・製造・販売といったオペレーションの効率化を目指すのに対し、クラスターは研究開発などによるイノベーション(革新)の創造を目指す。