北陸新幹線・小浜ルートが「千年の愚行」と大批判された理由! 自然のみならず「日本人の価値観」も破壊? 京都仏教会・猛反発の理由を熟考する

キーワード :
, ,
北陸新幹線の敦賀以西延伸計画が、「自然と共生する価値観」と「西洋的発展モデル」の間で議論を巻き起こしている。京都仏教会をはじめとする宗教団体がこの計画を批判し、自然破壊を伴う開発が地域の文化や倫理に与える影響を懸念している。未来のモビリティにおいて、東洋的価値観をどのように取り込むかが問われている。

東洋の自然観と小浜ルートの問題

北陸新幹線(画像:写真AC)
北陸新幹線(画像:写真AC)

 日本は東洋の国であり、ほとんどの日本人は東洋人である。

 東洋における自然観は、調和と共生を重視する。自然は単なる資源ではなく、生命を持つ存在として尊重される。日本の禅文化を海外に紹介し、ノーベル平和賞の候補にも挙がった仏教学者・鈴木大拙(1870~1966年)は著書『続 禅と東洋文化』のなかで、

「山と仲良しになる」

という表現を用い、自然との関係を対等なものとして描写した。富士山に登る目的は「征服」ではなく、その美しさや壮大さに感動するためだと述べている。これは、自然を

「支配する対象」

とみなす西洋的態度と明確に対比される。鈴木氏は同様のことを1963(昭和38)年1月に東京・赤坂公堂で行われた講演でも語っている。この講演は現在、「最も東洋的なるもの」というタイトルでYouTubeでも聞ける(新潮社からCDにもなっている)。山は支配の対象ではないため、

「山に抱かれる」
「自然に抱かれる」

という表現も日本では自然に使われる。しかし、北陸新幹線の小浜ルート計画を見ると、この東洋的な価値観はどれほど考慮されているだろうか。山間部を切り開き、トンネルを通すことで自然環境に大規模な影響を与えることは明白だ。京都仏教会も指摘するように、

「尊い自然は決して人の支配の対象ではない」

という理念に背いているように思える。自然を敬う東洋的な視点からすれば、このようなインフラ整備は自然と人間の共生という視座を欠いているといえる。

 一方で、小浜ルートは経済的効率性や利便性を追求する西洋的発展モデルに基づいている。西洋の自然観では、自然は人間の管理下に置かれ、資源として活用される対象だ。この考え方の延長線上に、科学技術を駆使して山を切り開き、高速鉄道を通すという発想がある。北陸新幹線の計画は、このような西洋的な自然観を色濃く反映している。

 元東京都立大学教授で、日本を代表する社会学者の宮台真司は、日本が西洋近代に飲み込まれないためには、相手(西洋)以上の近代的能力を身につけた上で

「あえて別の道を選ぶ」

必要があり、そうでなければ必ず馬鹿にされると喝破した(2010年10月、TBSラジオ「荒川強啓 デイ・キャッチ!」)。この視点に立つと、日本が新幹線という近代的なインフラ整備を推進すること自体は、必ずしも否定されるべきではない。しかし、その過程で東洋的価値観をどのように取り入れるかが問われるべきだろう。

 現状では、小浜ルートの計画がその「別の道」を模索しているようには見えない。

全てのコメントを見る