高級志向の航空会社はなぜ破綻するのか? 「豪華サービス = 良い」という壮大な勘違い、顧客ニーズとの大ギャップを考える
- キーワード :
- 飛行機
ケース2:豪華サービスは短距離のシャトル路線で無意味

全席ビジネスクラスというわけではないが、豪華なサービスで差別化を図った企業も存在した。その代表例が、米国の次期大統領(2024年1月16日時点)ドナルド・トランプ氏が1989年から1992年まで経営していたトランプ・シャトルである。
イースタン航空からニューヨーク~ワシントンD.C.およびボストン間のシャトル便運航権利を獲得し参入した同社は、赤いカーペットが敷かれ、トイレや洗面台もホテルのような仕様で話題となった。機内食は無料で提供され、朝はベーグル、夜はカクテルのサービスもあった。さらに空港の待合スペースはラウンジのように整備され、新聞やスナックが無料で提供されていた。この内容は、現代においても十分に豪華であるといえる。
しかし、トランプシャトルが致命的だったのは運航区間であった。同社が参入した米国東海岸のシャトル便は、飛行機内での滞在時間が1時間未満と短すぎた。豪華なサービスを楽しむにはあまりにも限られた時間であり、基本的には快適さよりも高頻度・正確な時間が重視されるビジネスマンがターゲットとなっていた。
日本でいえば東海道新幹線の東京~名古屋や東京~新大阪に近い需要といえるだろう。そのため、トランプシャトルはサービスが過剰であったために利用率が低下し、古い機材と相まってわずか三年で撤退に追い込まれた。
このシャトル便の区間では、1980年代初頭にニューヨーク・エアがフルサービスで参入した歴史がある。機内食にはフランスパンを使ったボリュームあるサンドイッチに加え、ワインも提供されるなど、長距離路線で見られるような豪華なサービスが特徴だった。しかし、顧客ニーズとのズレが原因で短期間で撤退を余儀なくされた。
ニューヨーク・エアとトランプシャトルは、サービスのよさが魅力ではあるものの、ターゲットとする顧客層や運行路線を誤ると逆効果になるという現象を示す事例として、現代にも多くの教訓を残している。