“限界集落”目前? 大阪・南港ポートタウン「高齢化率49%」の現実! 理想のニュータウンはなぜ時代に取り残されたのか?

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車両通行禁止を掲げて街づくりが進められた大阪市のニュータウン「南港ポートタウン」。しかし、今では人口減少と高齢化に悩まされている。理想の暮らしを目指して作られたこの街は、これからどうなっていくのだろうか。

都会の限界集落

ポートタウン東駅へ入ってきたニュートラム(画像:高田泰)
ポートタウン東駅へ入ってきたニュートラム(画像:高田泰)

 車両通行禁止を掲げて街開きした大阪市のニュータウン・南港ポートタウンが、人口減少と高齢化に苦しんでいる。理想の暮らしを追い求めた街はどうなるのだろうか。

 緑に囲まれた街区に10階建て以上の集合住宅が整然と並ぶ。その間を走るのは、広い歩道とニュートラム(大阪メトロ南港ポートタウン線)。大阪市の人工島・咲洲にある南港ポートタウン(住之江区南港中)は1977(昭和52)年、大阪市が街開きした。

 広さは東京ドーム21個分に当たる約100haで、うち公園と緑地が16%を占める。地域内に

・緑のまち
・海のまち
・太陽のまち
・花のまち

の4街区があり、市営住宅や都市再生機構、民間の集合住宅を集めた。小中高校から大学、ショッピングセンター、飲食街、病院、高齢者施設まで完備している。

 街開きした1970年代は公害と交通事故の多発が社会問題となっていた。大阪市が許可車両だけがなかへ入ることができる車両通行禁止を打ち出したのは、排ガスと交通事故から住民を守るためだ。コンクリートの殺風景な港湾区域に生まれた緑豊かなポートタウンは、別天地に見える。

 集合住宅のダストシュートから投げ入れた家庭ごみを空気の流れで高速輸送するシステムを導入するなど、当時の先端技術も取り入れた。そんな理想を詰め込んだ街も街開きから50年近くがたち、厳しい現実に直面している。12月上旬に訪れたポートタウンで見えたのは、人口減少と高齢化が進んだ“都会の限界集落”ともいえる姿だ。

緑のまちの高齢化率は49%

南港ポートタウンの集合住宅(画像:高田泰)
南港ポートタウンの集合住宅(画像:高田泰)

 整備された住宅は集合住宅ばかりの約1万戸。1981年にニュートラムが開通したことで人気が高まり、1990年に約3万2000人まで人口が増えた。

 しかし、その後は減少する一方。2024年9月の大阪市推計人口では、約1万8000人に落ち込んでいる。空室は珍しくない。

全人口の42%を65歳以上の高齢者が占める。大阪市全体の高齢化率25%を大きく上回る数字だ。特にポートタウン東駅周辺の緑のまちは、人口約3700人の

「49%」

が高齢者。人口の50%以上が高齢者の地域を限界集落と呼ぶが、限界集落到達が目前に迫っている。ポートタウン西北にある花のまちで、連合振興町会会長を務める川邊勇さんは

「私は80歳。それなのに、高齢者ばかりで跡を継ぐ若い役員がいない。ポートタウンの将来が不安だ」

と打ち明けた。

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