自動車の「運転支援システム」、実は危険だった? 人間の学習能力が裏目に―衝撃の米国研究が明らかに

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運転支援システムの進化は目覚ましく、2024年7月から欧州で新車への搭載が義務化される一方、米国での調査では依存によるドライバーの集中力低下が浮き彫りに。ボルボS90やテスラモデル3での実験結果から、安全運転を実現するためにはさらなる対策が求められる現状が明らかとなった。

運転支援システムの落とし穴

テスラモデル3(2020年型)(画像:Tesla)
テスラモデル3(2020年型)(画像:Tesla)

 ボランティア29人が4週間にわたりボルボS90を運転し、その挙動を詳細に検証した結果、運転支援システムを使用している場合の方が注意散漫な行動を取る頻度が高いことがわかった。具体的には、

・運転中の食事
・身だしなみの調整
・電子機器の操作

などが増加する傾向が見られた。

 さらに、過去の研究と同様、運転支援システムに慣れるにつれて、参加者が運転に対して無防備で注意を怠る傾向が強まることも示された。実験後半では、参加者が

「運転時間の約30%を注意散漫な状態で過ごしている」

ことが判明している。

テスラ実験の警告頻発

MIT10号館とグレート・ドーム(マサチューセッツ州ケンブリッジ(画像:John Phelan)
MIT10号館とグレート・ドーム(マサチューセッツ州ケンブリッジ(画像:John Phelan)

 次に、IIHSとマサチューセッツ工科大学エイジラボの研究チームは、テスラモデル3を使った実験を実施した。この実験では、テスラのオートパイロットや半自動運転技術を初めて利用する14人が参加し、4週間にわたり運転中の挙動がモニタリングされた。

 14人の参加者は合計で約1万9000kmを走行し、オートパイロット機能使用中に3858回の注意喚起警告を受けた。その半数近くは、少なくとも片手がハンドルに触れているものの、トルクセンサーが検知するほどの圧力が加えられていない状況で発生した。この結果、システムが

「手放し運転」

と判断し警告を発したケースが多かったことが明らかになった。今回の調査結果は、運転支援システムがもたらす利便性と課題の両面を改めて浮き彫りにしている。

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