熊本市電、なぜ重大インシデントが多発? 「人手不足」「劣悪労働環境」が招いた当然の結果? 乗客の安全はいずこへ

キーワード :
,
熊本市電は2024年に、全国で発生した4件の重大インシデントのうち3件が発生し、運転手不足や安全管理体制の不備が明らかになった。これらの危険な事象や過酷な労働環境に対し、熊本市は改善に向けた具体的な対策を進めているが、路線網の拡大と賃金改善が課題となっている。

運転手の過酷な労働環境

熊本市電のある風景(画像:写真AC)
熊本市電のある風景(画像:写真AC)

 公表された改善指示から、熊本市電の運営体制が深刻に崩壊していることが明らかになった。具体的には、以下の問題が指摘されている。

・上熊本車両工場に所属する運転士への2023年の教育実施計画が策定されておらず教育が行われていなかった
・2023年に実施した知識及び技能の確認で技能の結果が基準に達していない運転手に電車を運転させていた
・視力検査が基準に達していない運転手に電車を運転させていた
・点呼を実施していないのに点呼の記録が記入されていた

これらの指摘から、熊本市電の運営が乗客の安全を大きく損なっている状況にあることが浮き彫りになった。

 さらに、安全管理体制の崩壊の原因については、2024年7月に発表された「熊本市交通局におけるインシデント等に関する検証委員会中間報告書」で、運転手へのヒアリングを通じて、深刻な労働環境の実態が明らかにされた。

 労働環境の問題は多方面にわたる。例えば、勤務シフトでは、夜間勤務が23時40分に終わった後、わずか8時間後に次の勤務が始まることがある。また、休憩時間の配分にも問題があり、日中は10分程度しか休憩を取れず、夜間は40分から50分の空き時間が生じている。さらに、

・時間外勤務を断りづらい職場の雰囲気
・当日の朝に突然の勤務要請があること

など、運転手への心身の負担は深刻だ。また、運賃の支払い方法が多様化したことにより、乗客の支払いが滞ることが増え、その際に他の乗客から罵声を浴びせられることもあり、運転手の負担がさらに増加している。

全てのコメントを見る