高齢者置き去り? 「ITオンチな利用客」が直面する路線バスデジタル化、専門家が警鐘する現実とは
路線バス業界を悩ますIT格差
オピニオンサイト「アゴラ」は2024年11月19日、「「ITが苦手な人」への社会的配慮は要らない」という刺激的なタイトルの記事を公開した。記事の主な内容は次のとおりだ。
・日本は他国に比べてデジタル化が遅れ、依然としてアナログ社会が続いている。
・パンデミック(世界的大流行)時には、ハンコを押すために出社したり、高齢者向けにアナログ対応が続いていたりする現状がある。
・生成AIの利用率は他国に比べて低く、IT関連の詐欺にだまされる人が多い。
・多くの人が「ITが苦手」と感じているが、実際には「やりたくない」だけである。
・特に高齢者に見られるが、パソコン操作は適切な指導で習得可能である。
・高齢者でも訓練すれば、半年でパソコンを使いこなせるようになる事例がある。
・ITが苦手な人に合わせてアナログ対応を続けると、社会全体が非効率になってしまう。
・令和時代においてアナログ対応を続けることは不合理であり、ITに適応できない人は損をしてもやむを得ないという立場が求められている。
・ITを学ぶことによって詐欺のリスクが減り、脳への良い刺激を与え、社会とのつながりを保つためにもITスキルを習得すべきだ。
・日本のデジタルデバイドの原因は、ITインフラではなく、ITに対する拒否反応によるものである。
・アナログ対応を続ける余裕はなく、ITに適応できない人が損をするべきだという考えが必要だ。
一方、路線バスの専門家である筆者(西山敏樹、都市工学者)は、この見解に反対の立場を取っている。路線バス業界における「ITが苦手な人」の問題は深刻であり、その理由について詳しく説明する。
デジタル化進展と移動格差
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進展するなかで、ITが苦手なバス利用者への配慮が不足すると、
「移動環境における不平等」
が広がる恐れがある。特に高齢者やITに不慣れな人々は、日常的な移動においてさまざまな困難を感じており、これらの問題の解決が急務となっている。
日本に限らず、世界的にデジタル化が進んでおり、人手不足やコストの問題が深刻化するなかで、従来の大規模なインフラを効率的で簡便なITサービスで補うことが求められている。
例えば、公共交通では、鉄道駅の券売機の数を減らし、モバイル系交通ICカードの使用が推奨されている。また、今後はクレジットカードのタッチ決済やコード決済の導入も進む予定だ。しかし、ITに不慣れな人々の存在は依然としてバス業界における大きな課題であり、
「社会全体での配慮」
が求められる。さらに、ドライバーのストレス軽減のためにも、両替を避け、ITベースの決済システムが普及することが望まれる。