大阪・黒門市場はなぜ「ぼったくり商店街」と呼ばれるのか? 観光立国政策が生んだ地元離れと脆弱性の正体【リレー連載】ビーフという作法(3)
ウェブメディア『現代ビジネス』は2024年11月、「“インバウンド批判”は勘違いだらけ…メディアがつくりあげた「大阪・黒門市場」の悲痛な叫び」「“土地が高くなりすぎて”…黒門市場がインバウンド観光地になるしかなかった“悲しい理由”」という記事を前後編で公開した。その内容をそのまま鵜呑みにしていいのか。
観光戦略の限界が露呈

この方針の課題が明らかになったのは、コロナ禍で外国人観光客が途絶えた時期だった。すでに地元客の利用が減少していた黒門市場では、インバウンド需要の減少により、多くの商店が閉店を余儀なくされた。
さらに、コロナ禍が収束した現在でも、失われた地元客が戻らず、一部の店舗を除いて日本人客の利用は回復していない。そのため、黒門市場は以前にも増して
「インバウンド依存」
を強めざるを得ない状況に直面している。
この変化は単なる商売の成功や失敗の問題にとどまらない。外国人観光客の「良いものには高くてもちゅうちょしない」といった特性に依存し、高額商品に特化したことで、一時的な収益向上をもたらした。しかし、この選択が地域住民との結びつきを弱め、コロナ禍で経営の脆弱(ぜいじゃく)性を浮き彫りにした。
さらに、インバウンド依存からの脱却が難しくなり、伝統的な市場としての機能を失いつつある。このような状況を招いたのは、観光立国という方針に基づき、短期的な収益を優先し市場の本来の在り方を変えてしまったことが大きな要因だろう。
インバウンド重視の観光戦略が抱える課題は、この事例に顕著に表れているように感じる。外国人観光客に頼りすぎることは、思考の選択肢を狭める結果になりかねない。
問題があるのは商店街そのものというより、国の政策が安易だった点にある。こうした状況を招いた背景には、国の方針にも一因があるのだ。