「シートベルト = 命を守る」は過信だった? 福岡事故で明らかになった、子どもを守るための新しい基準とは

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2024年8月、福岡市で起きた悲しい交通事故で、7歳と5歳の女児が命を落とした。ふたりはシートベルトを着用していたが、衝撃を受けて死亡した。その原因は何だったのだろうか。この事故を通じて、子どもに適切な安全対策を講じる重要性と、シートベルトが子どもには必ずしも適切でない場合があることが明らかになった。

シートベルトの落とし穴

シートベルトを着用する子ども(画像:写真AC)
シートベルトを着用する子ども(画像:写真AC)

 結論からいうと、シートベルトは「大人を保護するためのもの」であり、子どもにとっては安全なものではないことが主な原因だ。こども家庭庁の資料によれば、

「自動車のシートベルトは交通事故などの衝撃により大人の乗員が全身を強打したり、車外に放り出されないようにするための保護装置」

と説明されている。また、日本自動車連盟(JAF)のオンラインメディア「JAF Mate Online」には、

「6歳になるとチャイルドシートの着用に対して法的な義務がなくなる。しかし、子どもがチャイルドシートなどに座らずシートベルトを使うと事故の際に腰ベルトが骨盤のサポートをせず、肩ベルトは首にかかり安全の確保ができない。そのため、子どもが危険になることがある」

と記載されている。つまり、身長が足りない子どもがシートベルトを使うと、逆に危険な状態を作り出してしまうということだ。

 文部科学省が2022年4月1日から2023年3月31日に実施した「令和4年度学校保健統計(学校保健調査の結果)確定値」によると、6歳児の平均身長は男子で117cm、女子で116cmとなっている。

 JAFの「はじめてのチャイルドシートクイックガイド」には、平均身長の子どもがシートベルトを装着すると、肩ベルトが首にかかり、腰ベルトがお腹の柔らかい部分にかかると記載されている。この状態で衝撃を受けると、首や内臓に深刻な損傷を与える可能性があるという。

 これらのことから、シートベルトは大人向けの保護装置であり、子どもには適していないと理解できる。筆者はこれまで、6歳を過ぎれば子どももシートベルトを安全に使えると思っていたが、実際にはそれが子どもを危険にさらす結果になっていた。

 もしこれらの情報がもっと広く知られていたなら、守れた命もあったかもしれない。

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