最近、街なかで「社名入りの歩道橋」をよく見かけますが、なぜ増えているのでしょうか?

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日本初の歩道橋が完成してから約65年。老朽化や少子高齢化の影響で撤去されるケースが増えるなか、今、新たな維持管理策として注目されるのが「ネーミングライツ」だ。名古屋や大阪では、企業が支援することで施設の名前に自社名を冠し、地域貢献とPR効果を狙う取り組みが進行中。全国に1万基以上存在する歩道橋に、企業名が冠される未来が迫っている。

歩道橋の歴史と進化

一般的な歩道橋(画像:写真AC)
一般的な歩道橋(画像:写真AC)

 日本初の歩道橋は、1959(昭和34)年に完成した。クルマの普及が進んでいた時期で、愛知県西枇杷島町(現在の清須市)の国道22号に架けられた。周辺には小学校があり、交通量が多いため、児童の交通事故が目立っていた場所だ。付近には幼稚園や保育園もあり、子どもたちは通学のために国道を渡らなければならなかった。

 増渕文男氏の論文「跨道人道橋の建設史と設計基準の変遷に関する研究」(1993年)によると、歩道橋が増え始めた昭和30年代後半(1960~1970年代)は、交通事故が急増し、社会問題として「交通戦争」が起きていた時期だった。そのため、歩行者の安全を守るために、クルマと歩行者を完全に分ける歩道橋が考案されたという。

 このような歩道橋は、全国的に普及し、今でも学校の近くや交通量の多い道路に見られる。かつては歩道橋の橋げたに道路名や地名が記されていたが、最近では地名ではなく、異なる名称が使われることも多い。

 これは、スポーツ施設などで使われる

「ネーミングライツ」

が歩道橋にも適用されるようになったためだ。ネーミングライツとは、企業や団体が施設や場所の名前に自社名やブランド名を付ける権利を購入することだ。スポンサーがその施設にお金を支払い、施設の名前に自社名や商品名を付ける仕組みで、例えば、スポーツ施設やスタジアムではスポンサー名が施設名に入ることがよくある。

 この仕組みは、スポンサーが自社のブランド認知度を高めるために利用し、施設側はネーミングライツを売ることで資金を得ることができる。最近では、駅や歩道橋などの公共施設にもこの仕組みが取り入れられるようになってきた。

 では、なぜ歩道橋にもネーミングライツが導入されるようになったのだろうか。

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