航空自衛隊のT-7後継機取得 「官製談合」疑惑が再燃するなか、透明な入札は実現できるのか?

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航空自衛隊のT-7後継機入札では、官製談合の疑念や不透明な決定プロセスが再び問題視されている。整備費用は見積もりの倍に達し、国際的な信頼性も低下している。今後は透明性を確保することが急務だ。

KC-46Aの欠陥続出

石井紘基の秘書を務めていた泉房穂の著書『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』(画像:集英社)
石井紘基の秘書を務めていた泉房穂の著書『わが恩師 石井紘基が見破った官僚国家 日本の闇』(画像:集英社)

 防衛省と空幕の不公正な調達体質は、その後も全く変わらなかった。空自の救難ヘリの商戦も、官製談合が強く疑われる事例のひとつだ。現行の三菱重工製UH-60Jの後継機として、川崎重工業、三菱重工業、ユーロコプタージャパンの三社が提案を行ったが、最終的にはUH-60Jの改良型であるUH-60JIIが選定された。当初、空幕は調達単価を23.75億円、LCCを1900億円と設定していた。

 しかし、実際の調達単価は50億円以上となり、約2倍に跳ね上がった。その後、劇的なコスト削減は行われていない。以前、筆者が空幕に質問したところ、

「劇的なコスト削減は無理だ」

との回答を得た。そもそも、現行のUH-60Jでも調達単価は40億円以上であり、頑張っても23.75億円にはコストダウンできないはずだ。

 さらに、空自の仕様書には60年代に廃止されたMILスペックが要求されており、日本独自の基準も盛り込まれていた。これは明らかに三菱重工のUH-60J改良案に有利な条件だった。この入札が不透明であったため、エアバス社やフランス政府から抗議が寄せられた。筆者はエアバス・ジャパンだけでなく、本社の重役にも取材を行ったが、彼らからは極めて強い憤りを感じた。このような不透明で不公正な入札が続けば、防衛省や自衛隊に対するだけでなく、

「日本政府への不信感」

も高まるだろう。それは今後の外交や自衛隊の装備調達にも悪影響を及ぼす可能性がある。

 T-7や救難ヘリの調達が官製談合でないとすれば、空幕という組織は調達能力が欠如している無能な組織ということになる。一体、どちらなのだろうか。

 2015年9月、空自の新型空中給油機の入札からエアバスが辞退した。この空中給油機には、ボーイング社が提案する米空軍と同じKC-46Aと、エアバスが提案する330MRTTの2機種が候補に挙がっていた。しかし、エアバスが入札に参加しない意向を固めたため、事実上KC-46Aの採用が決まった。また、エアバスの子会社であるエアバス・ヘリコプターズも同月、海上自衛隊の次期汎用(はんよう)ヘリへの入札を辞退すると発表した。

 これは、エアバスが空自の救難ヘリ商戦を経て、日本政府、防衛省、空自に対する不信の現れだろう。提案しても、本命が最初から決まっているため、競争入札の公平性を演出するための

「かませ犬」
「当て馬」

に使われるだけだと諦めているのだろう。実際、空自は最初から米国製のKC-46Aを採用するつもりだったのだろう。しかし、見た目をよくするために複数の候補が必要だったから、エアバスにも声を掛けたのだろう。けれども、単に米空軍と同じ機体だからという理由で採用するのは、プロとしては不適切だ。

 KC-46Aは開発段階から多くの問題を抱えていた。開発が遅れ、調達コストも上昇している。しかも、いまだにトラブルが多発している。2024年8月6日、空自のKC-46Aは空中給油ブームが引き込めなくなり、鳥取県境港市の米子空港(美保基地)に緊急着陸した。米空軍でもKC-46Aは空中給油システムに多くの不具合を抱えている。そもそも、空自が以前に採用したKC-767もトラブルが多い機体で、実際に空自ではこの機体のトラブルのため、北米に向かう戦闘機の給油を米空軍に依頼したこともある。

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