使い捨てにされる「軽バン配達員」 矛盾にぶち当たる物流危機、長時間労働は本当に「悪」なのか? 働き方の多様化を問う

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フリーランスの軽貨物自動車運送事業者が、コンプライアンスの抜け穴として消費される存在になりつつある。一筋縄ではいかないこの問題は、「長時間労働 = 悪」という現代の常識への疑問も投げかけている。

フリーランスの厳しい現実

宅配の軽バンイメージ(画像:写真AC)
宅配の軽バンイメージ(画像:写真AC)

「8割以上が月収39万円以下で働いているにも関わらず、半数以上が1日9時間以上働いており、また3人にひとりは1日11時間以上働いている」

特に都市部に住んでいる人なら、アマゾンなどの配送を軽貨物バン(以下、軽バン)で行っているのを見たことがあるだろう。これが軽貨物自動車運送事業者の実態だ。

 月収だけを聞くと、それほど悪くないと思うかもしれない。しかし、2023年5月に国土交通省が開催した「第2回 貨物軽自動車運送事業適正化協議会」で報告された調査結果は、個人事業主(フリーランス)の軽貨物自動車運送事業者を対象としている。

 サラリーマンと違ってボーナスはない。仕事の相棒である軽バンの購入費や燃料費、維持費などは収入から捻出しなければならない。特に25歳以下の40%が毎日13時間以上働き続けているそうだ。

 同調査では、半数以上の軽貨物自動車運送事業者が「荷主による違反行為がある」と回答しており、その例として次のような意見が寄せられている。

・毎日100~200個前後の配送を依頼され、休憩することもできない。その上、依頼数を達成できないと、仕事が来なくなる。
・昼食を食べる時間もなく、実働時間は15時間を超える。
・契約外の仕分け作業を要求される。
・時間厳守が絶対であり、遅れると評価点が下がり、仕事が減ってしまう。駐車違反をしないために時間貸し駐車場を利用しようにも、駐車料金を荷主や委託会社が負担してくれない。

 このような状況は、軽バンだけでなく、運送ビジネス全体の課題だった。しかし、「物流の2024年問題(以下、2024年問題)」への対策として、荷主や元請けとなる大手物流事業者がその優越的地位を乱用し、大型・中型・小型トラックでトラック輸送を行う運送会社と不埒なビジネスを行わないよう、法規制などが整備されつつある。

 一方、フリーランスの軽貨物自動車運送事業者の労働やビジネスを保護(あるいは指導監督)する方針はなく、実態調査も行われていない。実際、国土交通省は2023年1月、初の「貨物軽自動車運送事業適正化協議会」を発足させたくらいだ。

 そして今、2024年問題によってトラック運送ビジネスが浄化されつつあるなか、フリーの軽貨物自動車運送事業者者は、過重労働を課す法律の抜け穴として利用されているのだ。

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