公共交通政策もはや「骨抜き状態」 コストコ大渋滞問題が暴いた「コミュニティーバス」の虚実! 地域交通の精神は一体どこへ行ったのか

キーワード :
, , ,
コストコの新店舗が開店したことで、沖縄の南城市で大渋滞が発生し、コミバスが10時間も遅延した。このバスは高齢者の移動手段として導入されたが、今回の混乱で本来の目的が見失われ、地域交通の問題が浮き彫りになった。他の地域でもLRT導入に同様の課題が見られ、地域交通政策の再考が求められている。

交通政策のゆがみ

地域を走るさまざまなコミバス(画像:写真AC)
地域を走るさまざまなコミバス(画像:写真AC)

 筆者は仕事の関係で地方行政の職員の前で講演を行うことがあるが、その際に伝えるのは、

「コミバスは地域に根ざしたもので、成功例をただ真似しても意味がない。地域住民の気持ちや日常のアクティビティをしっかり観察し、それを支える手段としてコミバスを作ってほしい。」

ということだ。地方の政治家や行政職員は、成功例を視察して政策をコピーしようとすることがよくあるが、これは地方行政を進める上で避けるべきことだと認識するべきだ。

●路線バスをコミバスに肩代わりしてほしいバス事業者
 地域のバス事業者については、コミバスを「取りあえず走らせよう」とする流れに乗ってしまう傾向がある。「2024年問題」がクローズアップされているが、経営の効率を追求し、既存の路線バスを廃止した後にコミバスに置き換えたいと考えている場合も多い。

 そのため、コミバスの本来の目的である「交通弱者の外出支援」が後回しにされ、幹線道路を走る単なる路線バスの代替としてのコミバスが増加し、渋滞問題に巻き込まれる事例も多発している。そして、コミバスの信頼性が低下する新たな問題が生じている。路線バス事業者の苦境は今に始まったことではないが、行政がコミバスの運行に過度に期待する状況も否めない。

 このように、地方の政治家、行政機関の職員、バス事業者の思惑が重なり、地域交通政策が本質からかけ離れてしまった結果、コミバスがゆがんだものになってしまっているのである。

全てのコメントを見る