公共交通政策もはや「骨抜き状態」 コストコ大渋滞問題が暴いた「コミュニティーバス」の虚実! 地域交通の精神は一体どこへ行ったのか

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コストコの新店舗が開店したことで、沖縄の南城市で大渋滞が発生し、コミバスが10時間も遅延した。このバスは高齢者の移動手段として導入されたが、今回の混乱で本来の目的が見失われ、地域交通の問題が浮き彫りになった。他の地域でもLRT導入に同様の課題が見られ、地域交通政策の再考が求められている。

今の地域交通政策の構造

地域の政治家イメージ(画像:写真AC)
地域の政治家イメージ(画像:写真AC)

 このような状況が生まれる原因は、次の三つに分けられる。

・陳情に向き合わざるを得ない地域の政治家たち
・地域の公共交通を担わされる行政機関
・路線バスをコミバスに肩代わりしてほしいバス事業者

それぞれについて詳しく解説していく。

●陳情に向き合わざるを得ない地域の政治家たち
 多くの地域の政治家は、有権者からの陳情に対応せざるを得ない。特に高齢者からは「移動手段を確保してほしい」という声が多く、政治的な対応として、コミバスの導入が有力な解決策とされてきた。

 しかし、その結果、運行開始そのものが優先され、大切な運行計画や実質的な運用方法の検討がなおざりにされることが多い。前述の、コミバス第1号である武蔵野市の「ムーバス」は、地域住民が当時の土屋正忠市長にリクエストして始まったもので、住宅街にまで小型バスが入り、住民の移動手段を確保することが目的だった。1995(平成7)年のことであり、筆者も大学生の頃から同市で取材を行ったことを覚えている(研究室に入った1996年以降)。

 当時の担当者は他の地域の政治家たちが視察に訪れ、頻繁に問い合わせがあると話していた。多くの政治家は住民の声に応える形で、市長が路線開設に努力したことを誇示したが、その結果、「住宅街をくまなく回る」という崇高な理想が薄れ、路線バスの廃止にともなう代替交通としてのコミバスが増えるという残念な状況が生まれてしまった。

●地域の公共交通を担わされる行政機関
 地方自治体は、交通手段の確保を求められる一方で、資源や専門知識が不足している。筆者は都市交通を専門としており、地方自治体の職員との議論が多い。重要な問題であるにもかかわらず、地域交通の専門家を採用することはほとんどなく、定期的な人事異動も行われている。そのため、他の部署からの人の出入りが頻繁になり、政策の継続性が失われることが多い。そのため、コミバスの運行を委託する際に、十分な計画や運行方法の検討、事後評価が行われず、結果として効果的な地域交通サービスを提供できない状況が生まれているのだ。

 地域の政治家の意向も影響し、短期間で結果を出そうとするためにコミバスの開設プロセスが急ぎすぎることが多く、その結果、効果が低下する事例が多数見られる。コミバスの廃止や路線の見直しが各地で進んでいるのは、その影響でもある。

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