アンドレッティの参戦と欧米文化の差異【連載】開かれたF1社会とその敵(3)

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米国のアンドレッティ・グローバルが11チーム目として参戦しようとしているが、FOMが2026年まで認めないこの問題は、“F1ムラ”に対する米国の挑戦であり、欧米の価値観との戦いになりそうだ。

アンドレッティのF1再挑戦

マイケルが1993年のF1でドライブしたマクラーレンMP4/8(画像:Nuvolari72)
マイケルが1993年のF1でドライブしたマクラーレンMP4/8(画像:Nuvolari72)

 アンドレッティの話に戻ろう。

 米国チームとしてはハースがあるが、米国の大御所であるアンドレッティの参戦はそれとは意味が異なる。アンドレッティは以前からF1参戦の意志を示していたが、F1チームが新規参入を拒む理由は、前回で書いたように分配金の希薄化を恐れているからだ。また、過去の不安定なチーム運営やリーマンショック後のトラウマ(心的外傷)も影響している。

 アンドレッティの代表であるマイケル・アンドレッティは、1993年のF1参戦では成果を上げられなかったが、インディカーではチャンピオンである。彼の父マリオは1978年のF1チャンピオンであり、マイケルにとっては一種の

「リベンジ」

マリオにとってルーツである欧州での成功は「故郷に錦を飾る」を意味する。また、歴史的に開拓者精神が旺盛な米国なのだから、海外進出は自然な流れである。そう考えれば、アンドレッティ家が欧州に行くことにためらいはないだろう。

 実際、アンドレッティ・グローバルはインディカーだけでなく、フォーミュラEやラリークロスなど多岐にわたる活動を展開し、世界トップクラスのレーシングチームとして成功を収めている。

 それでも、各チームからは「F1に価値をもたらさなければならない」との声があり、2023年1月に2028年からキャデラックと提携することを発表し、F1チームオーナーたちを驚かせた。

 2026年までのF1参戦が認められなかったものの、アンドレッティは2024年4月にシルバーストーンに新ファクトリーをオープン。元アルピーヌのニック・チェスターなどF1関連スタッフを雇い、風洞実験を開始した。また、インディアナ州には2億ドルをかけた巨大な工場を建設中で、2025年の完成を目指しており、レーシングカーの生産能力にも問題はない。

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