「EV失速」は間違い? メディアの単なる“切り取り報道”か? 本当に失速しているのか【リレー連載】ビーフという作法(2)
2024年上半期、テスラとBYDのEV販売減少が報じられたが、グローバルでのシェアも増えている。報道の「EV失速」表現は誇張されており、季節変動を無視したデータ比較が影響。冷静なデータ分析が求められる。
EV市場の変動と影響

本連載のタイトルは「ビーフという作法」である。「ビーフ」とは、ヒップホップ文化における対立や競争を指す言葉で、1984年のウェンディーズのCMで使われた「Where’s the beef?(ビーフはどこだ?)」というキャッチコピーがその起源だ。この言葉は相手を挑発する意図で使われたが、後にヒップホップの世界で広く受け入れられた。本連載もその精神を受け継ぎ、モビリティ業界におけるさまざまな問題やアプローチについて率直に議論する場を提供することを目的としている。ほかのメディアの記事に対してリスペクトを持ちながらも、建設的な批判を通じて業界の成長と発展に貢献ることを目指す。
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時事ドットコムが2024年4月18日、「EV失速、自動車市場で何が起きているのか◆「意識高い系」購入一巡の先」という記事を配信した。
記事を要約すると、テスラや比亜迪(BYD)など大手電気自動車(EV)メーカーのEV販売が失速し、需要は停滞気味。EVシフトが鮮明だった海外メーカーもトヨタ自動車など“出遅れ組”が健闘するなど、戦略の転換が始まっている。一気にEVシフトが進むとの見方もあったが、日本メーカーがコスト競争力のある普及モデルを投入できるかどうかが、EV販売拡大の成否を分ける、というものだ。
失速の根拠として2024年1~3月期のEV販売台数を示し、
・テスラ:2020年4~6月期以来約4年ぶりに減少
・BYD:直近の2023年10~12月期と比較して4割以上減少
などと伝えている。さらに、中国で競争が激化する一方、欧米では
「最新技術や環境問題への関心が高い高所得者層のEV購入が一服したことも、成長鈍化の一因」
指摘している。
本稿では、この記事を三つの観点から批判する。