アンドレッティの参戦と欧米文化の差異【連載】開かれたF1社会とその敵(3)

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米国のアンドレッティ・グローバルが11チーム目として参戦しようとしているが、FOMが2026年まで認めないこの問題は、“F1ムラ”に対する米国の挑戦であり、欧米の価値観との戦いになりそうだ。

制裁金を超える戦略

2002年に出版された「Mario Andretti (Racer Series) 」(画像:Motorbooks Intl)
2002年に出版された「Mario Andretti (Racer Series) 」(画像:Motorbooks Intl)

 米国での話をもうひとつ。

 プロバスケットボールのNBAには「サラリーキャップ」という年俸の上限があるが、それを超えると「エプロン」と呼ばれる、お金では解決できない制限が課せられる。

 なぜなら、上限を超える制裁金を支払ってでも、年俸の多い優秀な選手を集めて試合に勝とうとするチームが増えているからだ。

 NBAは資金力のあるビッグチームが結成され、そのうちの数チームが優勝争いをすることを懸念し、制裁金に加え、トレードやドラフトの制限を認める「セカンドエプロン」も導入し、競技場の均衡を図っている。

 つまり、ウィリアムズでも勝てる状況を作ろう、レッドブルのような「4強」ではなく「10強」を目指そう、というのが米国の基本的な考え方である。

 欧州サッカーでもレアル・マドリード、マンチェスター・シティ、バイエルン・ミュンヘンなどのビッグクラブだけが勝つことは不可能であり、F1でもサラリーキャップや風洞実験制限などを導入しているが、ビッグチームの存在にはそれほど気にしていない。

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