JR東海から突然720万円の請求書! 2007年「認知症鉄道事故」から考える超高齢化社会の行方、いまや認知症行方不明者は年1万9000人という辛らつ現実
認知症事故と保険の問題

まず、ワーキンググループ内で先に議論された責任は、資料中の次の点を考慮して決定されると考えられた。
・加害者の責任能力(認知症の人の責任能力)
・監督義務者の過失(家族は事故が起きないよう、注意してたのか)
・被害者の注意義務違反(鉄道事故が起きないよう、対策をしてたのか)
これらを踏まえて、最初のケースを検証してみよう。
まず、加害者の責任能力であるが、認知症と診断された時点で、認知能力が低下し社会生活に支障をきたす状態にあり、責任能力が低下していたと考えられる(日本老年学会ウェブサイト)
2点目。加害者の責任能力について先に書いたように、センサーを設置するなどの対策を行っており、最高裁は一般的な対策レベルを満たしていると判断したのであろう。
3点目の鉄道会社の事故防止対策については、遺族が、被害者が線路に立ち入ったと思われる駅のホームのフェンスが扉施錠であることを訴えており、鉄道会社としても、このような事故を未然に防止するための対策を講じる必要がある。
以上の3点を考えると、責任能力のない人の鉄道事故責任について、社会全体としてどう対処する必要があるのか。
国の回答は、検討の結果、現時点では次の点を考慮し、「今後も鉄道事故状況に注視しつつ、議論は終了する」として、ワーキンググループを終了させた(第5回 認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議)。
・認知症の人の鉄道事故は平成26年度で29件程度、請求賠償額も最高120万程度。
・認知症の人が加害者となる訴訟は確認できず、民間保険の賠償請求も数件程度。
・民間保険があるため、民間保険を活用できる状況があること。
・新たな保険制度も考えられるが、モラルハザード(※)や財源の問題があること(※保険がある安心感で、ひとり歩き対策が十分に実施されない懸念)
要するに、発生件数も少なく、被害額も少ない。民間の保険も利用できるため、保険に加入していれば法的責任は保証される。その一方で、新しい保険制度における財源やモラルハザードを懸念している。
国がやらないなら自治体が考えればいいということで、「特定の自治体のみが認知症事故救済事業」という事態を招いた。
特定の自治体が展開する「認知症事故救済事業を利用した損害賠償保険」の必要性を訴える有識者の意見と最新の数字を見てみよう。