業界に漂う閉鎖的構造の背景【連載】開かれたF1社会とその敵(1)

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F1は参戦規定が厳格化。その歴史的背景から技術力向上や経済効果のためにチーム数の制限が強まっている。

賞金が支えるチーム力向上

筆者が過去に取材した際のF1画像(画像:武田信晃)
筆者が過去に取材した際のF1画像(画像:武田信晃)

 製造者同士が競い合うコンストラクターズ選手権が創設された理由はいくつかあるが、その目的は、技術力を向上させることなどにある。

 F1が始まってから年月がたち、その地位が高まるにつれて、世界中の自動車メーカーが参戦に興味を示すようになった。自社技術をアピールし、名前を広めることができるからだ。また、チャンピオンになることでブランド力のさらなる向上も期待できるし、F1全体から見れば、さまざまなコンストラクターが参戦することで、多様性が生まれることにつながる。

 実際のところ、F1の歴代チャンピオンをいえる人はたくさんいるが、コンストラクターズ・チャンピオンをいえる人はなかなかのF1マニアである。しかし、この選手権はチーム力向上には欠かせないタイトルである。なぜなら、最終順位に応じて、多額の賞金がチームに分配されるからだ。

 それはマシン開発に使われるだけでなく、スタッフのボーナスにも反映される。年功序列の働き方がない海外では、転職によるキャリアアップが普通だ。ボーナスの支給は、会社への忠誠心やモチベーションを高める大きな要因となっている。

 加えて、現在のF1では支出に上限が設けられているため、戦う土壌はかなり公平になっている。そのため、競争は激しさを増しており、これは優秀なスタッフを確保するという観点からも重要である。

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