業界に漂う閉鎖的構造の背景【連載】開かれたF1社会とその敵(1)
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新規参戦チームへの壁

時代は流れ、世代交代のときが来た。2016年、当時F1の経営権を所有していたCVCキャピタル・パートナーズは、45億米ドルで米国のリバティ・メディアに株式を売却すると発表した。リバティ・メディアはF1の新オーナーとなり、欧州の経営スタイルだったF1に米国の経営スタイルを持ち込んだ。
テレビ画面に映し出される情報量は劇的に増えた。ネットフリックスのドキュメンタリー『Formula 1: 栄光のグランプリ』は、米国でF1ブームを巻き起こした。
F1は相手を出し抜こうとする激烈な競争の世界だが、その一方で「F1サーカス」でもあり、知っているメンバーがずっと世界中を興行する。
2017年以降は常に10チームで固定され、チーム間の争いはあるものの、F1全体としては徐々に閉鎖的になってきている。米国のおかげでF1がよりもうかるビジネスになれば、既得権益化する。
それは人間の性なのかもしれないが、「アンドレッティ問題」で顕在化した。2020年に結ばれた最新のコンコルド協定では、新型コロナウイルスの影響もあって2021年の分配金は減額されたようだが、基本的には既存チームの立場と財政基盤をより強化する内容になっている。
そのひとつが新規参戦者に対する規定だ。出場できるチーム数は最大で12チームだが、分配金の希薄化を防ぐため、新チームはそれぞれ2000万米ドルを各チームに支払わなければならない。にもかかわらず、F1チームはさまざまな難癖をつけてアンドレッティの参戦を阻止しようとするのだから、閉鎖的な体質がうかがえる。
また、リバティ・メディアもコロナによる負債の返済がなかなか進まない。一方、F1チームは分配金の増額を要求しており、苦しい立場に置かれている。そのため、開催数を増やし、収益の分母を増やそうとしているのだ。
このような状況下で新参者を受け入れたくないという気持ちが働いた結果、FIAはアンドレッティの参戦を認め、FOMはそれを拒否した。まさに二重構造の弊害の結果だった。