「高卒」が企業に人気のワケ なんと求人倍率は大卒の「2.2倍」、AI時代における“学歴”の価値とは?

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上越市長の発言が学歴差別として波紋を呼ぶなか、高卒と大卒の求人倍率や賃金格差を比較し、AI時代における学歴の価値を再考する。

日本は学歴社会ではない

会社員のイメージ(画像:写真AC)
会社員のイメージ(画像:写真AC)

 大卒と大学院卒を見ても、似たようなことがいえる。

 そもそも日本では、採用時点において、大卒よりも修士が、修士よりも博士が採用において重視されることはない。また、博士が就職先に困っているという状況すらあり、よいか悪いかは別として、

「より上位の学校に進学することに価値を置いていない企業が多い」

ことは明らかだ。日本では学校歴はある程度は重視されているかもしれないが、少なくとも教育段階別の経歴である修学歴はあまり評価されていないのだ。以上のような現状を見ると、日本は「学歴社会」であるとはそれほどいえない。

 さて、なぜこのようなことが生じるのだろうか。ひとつの理由として考えられるのは、日本は長らく

「メンバーシップ型採用(仲間探し型の採用)」

をしてきたことがある。やる仕事や職種を決めて採用する「ジョブ型採用」が、既に持っている能力≒「顕在能力」を重視して評価するのとは違って、「メンバーシップ型採用」では

「人柄やポテンシャル=潜在能力≒学習能力」

を評価する。平たくいえば、既に何か色がついている人よりも、何も色がついていない「真っ白」な人を採用して、彼らを育てて、

「自社の色に染め上げる」

ことを重視してきた。その方が、成果を出せる人になると考えているのである。

 だから、いろいろ独自の色がついている大卒者や大学院卒者などよりも、高卒者の方がよい場合も大いにあるという考えとなる。自動車業界においても好事例がある。トヨタ自動車の設立した80年以上の歴史を持つトヨタ工業学園(旧・トヨタ技能者養成所)である。

 トヨタは現在でも中学卒の人材を集めて、ポテンシャル採用と人材育成を自社で行っている。そして、同校を卒業してトヨタ自動車に入社し、副社長にまで上り詰めた河合満氏(現・エグゼクティブフェロー)をはじめ、多くのトヨタ幹部を輩出しているのだ。

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