EV市場に垂直統合型で挑戦、日本100店舗計画とグローバル展開【短期連載】進撃のBYD(4)
BYDは、独自の垂直統合型と電池技術を武器に、世界中で急速に市場を拡大している。日本では2025年末までに100店舗、タイでは年間生産能力15万台の工場、欧州8か国での展開を目指している。インドでは2030年までに40%の市場シェア獲得を目指す。
自社一貫生産の強み

世界中で事業を拡大し続けるBYDだが、その背景にある戦略は、電池から車両まで自社で生産する垂直統合型のビジネスモデルだ。
垂直統合型とは、川上(原材料の調達)から川下(販売)まで、製品づくりに必要なすべての工程を1社で担うビジネスモデルのことだ。自動車産業でいえば、鉄鋼や樹脂などの原材料の調達から、エンジンやボディ、内装などの部品製造、完成車の組み立て、ディーラーでの販売まで、すべてを企業グループ内で行うことを意味する。つまり、本質は、自社製品に関わるサプライチェーン全体を一社で所有し、外部に依存しないことにある。
垂直統合型の第一のメリットは、市場変動の影響を受けにくいサプライチェーンの構築が可能になることである。例えば、世界的な半導体不足で多くの自動車メーカーが減産を余儀なくされた際、チップの内製化を進めていたBYDは、他社と同程度のダメージを回避することができた。また、外注コストを削減することで、価格競争力のある製品を投入しやすくなる。部品の共通化・モジュール化を進めることで、開発期間を大幅に短縮することも可能だ。
垂直統合型のビジネスモデルを生み出したのは、自動車産業の覇者として名高いフォードである。創業者のヘンリー・フォードは、1910年代に画期的な一貫生産体制を確立した。鉄鉱山や森林などの原料調達拠点に始まり、輸送船、製鉄所、ガラス工場、組立工場、販売店など、自動車製造に関わるすべてをフォードの傘下に収めた。これにより、T型フォードは当時としては破格の低価格で販売され、全米で人気を博した。