欧州vs中国「EV戦争」 最高48%の関税賦課も、中国の“報復措置”はまだ起きそうもないワケ

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欧州と米国が中国製EVに対し関税を引き上げるとした。政治的背景により、貿易紛争の可能性は低いが、米中の対立は政治紛争として深化する。

EV関税での本質的な違い

米中対立のイメージ(画像:写真AC)
米中対立のイメージ(画像:写真AC)

 このようにみると、欧州と中国とのEVを含む経済・貿易関係は緊張状態が表面化することはあっても、米中貿易摩擦のように関係の管理が難しくなるほど悪化、混乱する可能性は現時点では低いといえよう。

 そして、これによって米国と欧州では中国との向き合い方で大きな違いがあることもわかる。今回、欧州が関税引き上げの対象としたのはあくまでもEVに的を絞ったものであるが、バイデン政権は中国製EVの関税率を100%とするだけでなく、

・太陽光発電に使用される太陽電池:25% → 50%
・車載用電池、鉄鋼、アルミニウム:7.5% → 25%

とそれぞれ引き上げ、自動車や家電製品などに幅広く使われる旧型のレガシー半導体や医療用品など引き上げ対象品は多岐にわたり、その総額は日本円で2兆8000億円ほどになる。

 また、今日米国が輸入する外国産EVのうち中国製は2%程度しかなく、それに対して100%の関税というのは明らかに整合性が取れる決定とはいいがたく、中国を政治的にけん制する

「パフォーマンス」

といえよう。もしくは、今日米市民の間でも対中警戒論が広がり、秋の大統領選では対中強硬姿勢を示すことが支持拡大につながるという状況になっていることから、100%を国民にアピールし、100%を“象徴化”する狙いがあったのだろう。

 いずれにせよ、政治的背景から考えれば、欧州と中国との経済・貿易関係が米中貿易摩擦のようになる可能性は現状では考えにくい一方、米中間では関係の管理がいっそう難しくなるだろう。

・欧州と中国のEVを巡る紛争
・米国と中国のEVを巡る紛争

はそもそも“本質”が異なる問題である。欧州と中国のEVを巡る紛争は純粋な貿易摩擦であるが、米主導の国際秩序へ挑戦する中国の目標を打ち砕こうとする米国にとって、米中貿易摩擦は貿易摩擦ではなく、経済や貿易という領域を利用した

「政治紛争」

なのである。

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