欧州vs中国「EV戦争」 最高48%の関税賦課も、中国の“報復措置”はまだ起きそうもないワケ
欧州、対中警戒と経済結び付きのジレンマ

まず、今後の中国側の反応だが、習政権が今回の関税引き上げに対して強硬な報復措置に出るとは考えにくい。これにはふたつの理由がある。
第一に、今日中国製EVは英国やベルギー、スペインなど主な輸出先が欧州であり、ここで中国が強硬な報復措置に打って出れば、欧州との間でも“米中貿易摩擦”が生じるおそれがあり、EVを大量生産して諸外国に輸出する戦略を重視する中国にとってEVの欧州市場は極めて重要である。
第二に、中国が強硬な報復措置に出れば、欧州の間で中国警戒論がいっそう広がるだけでなく、欧州と米国が対中国でいっそう協力を強化する可能性がある。
去年の広島サミットでは中国の経済的威圧に対する懸念が共有されたが、習政権として多国間による対中対抗網が強化されることを避けたい。習氏がフランスを訪問したり、ドイツのショルツ首相が中国を訪問したりと、中国には欧州諸国と独自の経済関係を維持、発展させることで米国と欧州をデカップリングさせる狙いがあり、対中国で国際協調を図ろうとするバイデン政権を強く警戒している。こういった政治的に照らせば、今回の欧州による関税引き上げで、中国が強硬な報復措置に出る可能性は低いといえるだろう。
一方、今回のEU側の関税引き上げ措置からは、中国に対する警戒感はあるものの、中国との既存の経済関係を必要以上に悪化させたくないという実情も読み取れる。当然だがEUといっても加盟国によって対中警戒では温度差があり、米国のような対中強硬姿勢に撤する国はない。
米国や日本のように、欧州は中国と直接軍事や安全保障上の対立関係にはなく、
「米国や日本にとっての中国は、欧州にとってのロシア」
であり、米国や日本と“中国感”が同じではない。中国との経済的結び付きが強い国も多く、そう国々としては
「必要以上に中国を挑発するような行為」
は避けたいはずだ。また、欧州にはオランダのように温暖化を原因とする海面上昇によって国土がなくなる危機に直面している国もあり、環境対策に対する意識が極めて高く、中国製EVに対するニーズもある。しかし、冒頭でも指摘したように欧州の自動車メーカーを保護するという任務もあるため、今回の措置は双方の間でバランスを取ったものともいえよう。