EV推進派の裏切り? 米ニュージャージー州が導入する「EV道路税」が矛盾と不条理に満ちているワケ

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ニュージャージー州知事が2024年3月末、「EV道路税」を導入する法案に署名した。EV推進で知られる同州が、なぜEV販売にブレーキをかけるような道路税を課すのか。

実際の燃費と税制の不一致

EVのイメージ(画像:写真AC)
EVのイメージ(画像:写真AC)

 まず、ガソリン車の減少による税収減をどう補うかを検討した。

 ガソリン税の実際の負担額を調べたところ、トヨタ・プリウスで97ドル、ニュージャージー州で最も売れているとされるホンダCRVで127ドルだった。いうまでもなく、EVはこれらのガソリン車よりも燃費がよく、州全体にもたらす環境メリットは明らかに大きい。

 しかし、EV所有者が燃費の悪いガソリン車と比べて2倍近い税金を支払わなければならないのは腑に落ちない。環境に優しいEVに乗ることに対する懲罰的措置とも受け取られかねず、合理性に欠ける税制である。

 公平性を考えれば、EVの道路税は、同サイズのガソリン車のオーナーが支払うガソリン税よりも優遇されるべきであり、ガソリン税よりも低く抑えることが、新しい道路税を導入する際の最優先事項であるべきだ。

 次に、道路損傷についても検証してみたが、EVはガソリン車より重く、損傷が大きく、高い道路税を徴収すべきという誤解があるようだ。

 しかし、実際に道路損傷をもたらしているのは2万6000ポンド以上(約1万1800kg)の

「中・大型ガソリン車」

であり、EV所有者から高い道路税を徴収することでこれを補うことは“筋違い”である。最も重いEVのひとつにGMCハマーEVがあるが、その重量は9000ポンド(約4000kg)で、中型ガソリン車の重量には遠く及ばない。これほど重いEVはほんの一握りで、テスラ・モデルYは5000ポンド(約2300kg)未満だ。

 実際、EVが一般的に道路を傷つける原因になっているわけではなく、EV所有者が直接引き起こしたわけでもない道路損傷を、道路税の増税によって負担させられるべきでない。また、EV所有者は充電のための電気料金に含まれる税金を実際に支払っており、二重課税の疑いがあることも言及されている。

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