小湊・いすみ鉄道が「五井~大原」の直通列車を運行しない理由 房総横断の夢いかに

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小湊鉄道といすみ鉄道が運行する路線は千葉県の房総半島を横断しており、「房総横断鉄道」という名称で観光キャンペーンが行われている。しかし、相互乗り入れはしていない。なぜなのか。

1992年の横断構想

いすみ鉄道(画像:写真AC)
いすみ鉄道(画像:写真AC)

 こうした課題はあるものの、ふたつの路線を接続して直通運転を実現しようとする試みは、過去に何度か行われてきた。その経緯を見ていこう。

 最初の試みは1992(平成4)年のことだ。当時、いすみ鉄道は営業開始から5年目を迎えるも乗客の減少が止まらず、国からの赤字補助も打ち切りが予定され、毎年1億円の赤字が危惧される苦しい経営状況にあった。

 そこで、沿線自治体による対策協議会が立案したのが、相互乗り入れによる「房総横断鉄道」の実現だ。このときの構想では、

・東京湾横断道路(東京湾アクアライン、神奈川県川崎市~千葉県木更津市)
・かずさアカデミアパーク(千葉県木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市をホームタウンとする、バイオテクノロジーや先端技術産業に特化した研究開発拠点)

による活性化を見込んで、久留里線(木更津駅~上総亀山駅)まで列車を乗り入れる案も出ている。だが、小湊鉄道側は

「いまは乗り継ぎ客はほとんどいないので、現状での連結にはメリットがない」(『朝日新聞』1992年11月18日付朝刊)

との見解を示していた。加えて、直通運転の実現には信号機や電気系統の改修など、

「約1億円」

もの多額な設備投資が必要だった。しかし

・直通運転によるメリットが明確でない
・多額の費用をかけても十分な効果が見込めない

ことから、この案は具体化には至らなかった。

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