小湊・いすみ鉄道が「五井~大原」の直通列車を運行しない理由 房総横断の夢いかに

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小湊鉄道といすみ鉄道が運行する路線は千葉県の房総半島を横断しており、「房総横断鉄道」という名称で観光キャンペーンが行われている。しかし、相互乗り入れはしていない。なぜなのか。

企画乗車券の発売と企画展開

養老渓谷駅と養老渓谷の位置関係(画像:OpenStreetMap)
養老渓谷駅と養老渓谷の位置関係(画像:OpenStreetMap)

 それにもかかわらず、両路線のコラボレーションはより活発になっていく。

 2012(平成24)年8月14日、両社は「房総横断列車」を運行した。この列車には「五井~大原」という行先表示板が掲げられ、五井駅から大原駅まで直通で行けるかのような演出がなされた。もちろん、実際には上総中野駅で乗り換えが必要だったが、それでも乗客には好評だった。

 実はこの企画、いすみ鉄道が小湊鉄道に行先表示板を提案し、小湊鉄道が快諾したことで実現した。房総地域を直接横断する列車は運行できないが、行先表示板によって「房総地域を横断する列車がある」という印象を与えることで、乗客の興味を引き、両社のPRにつなげる狙いがあった。

「房総横断列車」は両路線のコラボレーションの新たなステージの幕開けとなり、2015年には両路線を乗り継ぐことができる企画乗車券「房総横断鉄道トコトコきっぷ」が発売された。

 さらに現在、小湊鉄道のウェブサイトには、あたかも直通列車があるかのように両線の時刻表を掲載した「房総横断時刻表」が掲載されている。

 厳しい経営状況のなか、両社は一丸となってこのコンセプトを地道にアピールし、集客を図っている。レールでつながらずとも、両社がアイデアと情熱でつながっていることは高く評価できるだろう。

 沿線の風景とともに、なんともいえないロマンにかられる両線。東京からそう遠くないので、ぜひその雰囲気を楽しんでほしい。

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