自動車メーカーが羨ましい! 現場のディーラーが「長期休暇」を取れない根本理由
厳しい目標設定とその達成方法

たとえ店に人が来なくても、店が営業している以上、目標を達成しなければならない。筆者が勤務していたときもそうだったが、本部がさまざまな形で店舗に厳しい目標を課すケースがあった。詳細は次のとおりである。
●来店目標
ディーラーを含め、多くの企業では顧客を「既存客」と「新規客」に分けてマーケティングしている。既存客には「フェアのお知らせ」というダイレクトメールを登録住所に送り、新規客には“飛び道具”であるウェブマーケティングや新聞広告を活用する。
“飛び道具”には、記念品やダイレクトメール持参で参加できる店内抽選会、お子さまプレゼントなど、来店インセンティブが盛り込まれている。特に既存客については、営業担当者ごとに来店目標を設定し、ダイレクトメールの送付・回収数で評価された。
営業担当者からすれば、「クルマを見に当店にお立ち寄りください」というより、「プレゼントや記念品が当たる抽選会をやっています」といった方が集客につなげやすい。来店してくれた顧客に何らかの商品を売れれば、自分の売り上げにつながる。したがって、まずは自分たちの“土俵”である店舗に来てもらうことが重要なのだ。
●販売目標
長期休暇中に開催されるフェアでは、お得な情報が提供される。新車だけでなく、オイル交換や季節商品など、カーライフに関わる商品を特別価格で提供することもある。新車については、「台数限定の特価品」を用意し、新車を検討している新規客と既存客の双方に訴求する。カーライフ関連商品は、関係が薄い既存客の取り込みに活用できる。しかし、これらの商品も店舗ごとに販売目標が決まっているため、現場は必死だ。
特に新車の販売目標は少ない来店回数で達成する必要があるため、管理職はどうすれば達成できるのか頭を悩ませている。筆者が勤務していたころは、長期休暇前の受注をそのまま「フェア期間中の受注」として登録することがよくあった。一種の“隠し球”である。長期休暇中はクルマが売れないにもかかわらず、それをやっていたのだから、何も知らない、もしくは知っていても知らないふりをする本社も味をしめたものである。