揺れるJR東日本・西日本、支社再編の行方を「運輸収入」「人口推計」から読み解く
人口減少で環境はますます厳しく

続いて総務省統計局による人口推計結果を使って、人口減少の影響について考察してみる。以下に、2010年10月、2020年10月、2030年(推定値)の生産年齢人口をまとめた。なお、2030年(推定値)は、2020年10月の調査結果における5歳から54歳の人口の合計であり、死亡や転入・転出は考慮していない、筆者(山本哲也、交通ライター)独自の算出である。
まずはJR東日本。カッコ内は2010年10月を100%とした場合の割合で、関東圏は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を、その他地域は青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、新潟県、山梨県、長野県を示している。
●2010年10月
・関東圏:2831万8000人
・その他地域:900万8000人
・合計:3732万6000人
●2020年10月
・関東圏:2733万人(97%)
・その他地域:772万9000人(86%)
・合計:3505万9000人(94%)
●2030年(推定値)
・関東圏:2566万人(91%)
・その他地域:699万8000人(78%)
・合計:3265万8000人(87%)
2010年10月を100とした場合、2020年10月には関東圏97%、その他地域86%、全体94%と明らかに減少している。関東圏とその他地域で、減少の幅が大きく異なっていることが特徴である。2030年(推定値)においても減少傾向は続いている。
同様にJR西日本の生産年齢人口推移を見てみよう。近畿圏は滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県を、その他地域は富山県、石川県、福井県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県を示している。
●2010年10月
・近畿圏:1331万6000人
・その他地域:649万7000人
・合計:1981万3000人
●2020年10月
・近畿圏:1219万7000人(92%)
・その他地域:576万9000人(89%)
・合計:1796万6000人(91%)
●2030年(推定値)
・近畿圏:1146万6000人(86%)
・その他地域:541万3000人(83%)
・合計:1687万9000人(85%)
2010年10月を100とした場合、2020年10月には近畿圏92%、その他地域89%、全体91%と、明らかに減少傾向にある。JR東日本のエリアと異なり、近畿圏とその他地域で減少の幅が大きく隔たっていないことが特徴である。2030年(推定値)においても減少傾向は続いている。
JR東日本とJR西日本を比較した場合、生産年齢人口全体の減少率は、ほぼ同じと評価してもよいだろう。しかしながら、JR東日本はその他地域の人口減少が著しいのに対し、JR西日本は、都市部とその他地域いずれも差はなく減少している。
人口減少を切り口とした場合、JR東日本ではその他地域をどう運営するのかが課題になってくるのに対し、JR西日本では都市部も含めた運営の見直しが課題となっており、鉄道運営の方向性が大きく異なってくると考えられる。そのため、今回の支社再編も両社はそれぞれの課題を解決する方向で、詳細が決められていく可能性があると筆者は考察する。