ローカル鉄道の輸送密度「1万人以下切り捨て」で見えてきた“明治初期への回帰” JRは結局、誰のために列車を走らせているのか?

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ローカル線の廃止は、地域の衰退や利便性の低下につながりかねない。鉄道には単なる輸送手段以上の価値があり、収益性だけでなく多様性という観点からも議論されるべきである。

単なる「移動手段」ではない鉄道価値

国交省・総務省資料より著者作成(画像:上岡直見)
国交省・総務省資料より著者作成(画像:上岡直見)

「鉄道(駅)を廃止すると町が寂れる」という話をよく聞く。ここで具体例として、北陸地域はかつて

「国鉄の駅ごとに私鉄が接続している」

といわれたほど多くの中小私鉄が存在する私鉄王国であったが、その多くが廃止された。ここを例にして

・現状で鉄道(駅)が存在する地域
・過去に鉄道(駅)が存在したが現在までに廃止された地域
・もともと鉄道(駅)が存在しなかった地域

の三分類で、それぞれこの間30年間の人口推移を調べてみた(図参照)。

 すると、現在も駅が存在する区域では、駅が廃止された区域・もともと駅が存在しなかった区域に比べると、人口の減少が抑制されている。

 実はその関係については研究者の間でも諸説があり、因果関係が逆(利用者が減少したから廃止せざるをえなかった)という見解もあるが、結果として鉄道駅が“町の核”となっていることが推定できる。

 ローカル線の存続は採算性だけでなく多様な側面から議論すべきではないだろうか。

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