ローカル鉄道の輸送密度「1万人以下切り捨て」で見えてきた“明治初期への回帰” JRは結局、誰のために列車を走らせているのか?
ローカル線の廃止は、地域の衰退や利便性の低下につながりかねない。鉄道には単なる輸送手段以上の価値があり、収益性だけでなく多様性という観点からも議論されるべきである。
問われるJRの運行目的

JR西日本の長谷川一明社長は鉄道の将来像について
「鉄道そのものを旅をいざなう乗り物にしていくことも重要です。メタバース(仮想空間に作られた世界)のようなバーチャルな空間を車内に組み込む発想があってもいいでしょう」
と経済誌のインタビューで語っている。
しかし地域の利用者はそのような鉄道を求めているだろうか。現実のローカル線ではダイヤ改訂のたびに減便・減車が続き、積み残しが発生するほどになっても地元の苦情に耳を貸さない。無人駅が増えてトイレも待合室も撤去が急速に進んでいる。
JR東日本の『TRAIN SUITE四季島』をはじめJR各社は最低ランクでも数十万円コースというクルーズトレインを運行している。近年は海外からの観光客も多い。それらの列車が走る景観にすぐれた路線のほとんどは「1万人/日以下」の赤字ローカル線だ。それでも大人気なのは単なる移動手段ではない価値を鉄道に見いだす人が多いからだろう。JR各社はローカル線を
「客寄せの材料」
として使ったあげく捨ててしまうのか。ローカル線の利用者は「お客さま」には含まれていないのかもしれない。