「常識的な隊員も多いのに」 陸自“大東亜戦争”SNS投稿を生み出した3つの組織病理、元中級幹部自衛官が解説する
塀の中の“常識”

三つ目は、世間の常識とのズレに気づかないことである。
自衛隊は閉鎖社会である。そのため塀の外と常識もズレている。
だからヘンテコな事態が横行する。1、2で挙げたライト・イズ・ライトや、“お理工さん”な判断も通用してしまう。
また、塀の外では到底通用しない理屈も堂々開陳が許されており批判を受けない。
元3等海佐(中級幹部)の筆者(文谷数重、軍事ライター)は某統合部隊で田母神(俊雄。第29代航空幕僚長)擁護論を聞いたことがある。アパ事件(2008年の田母神論文問題。田母神氏が政府見解に反する主張をした懸賞論文で大賞を受賞したと発表された直後に更迭された)で国民世論が免職を求め、政治も保革ともに早期更迭で一致していた時期である。それにも関わらず、しかもよりによって交代行事で転出指揮官が
「田母神さん悪くない」
と前日の更迭の非を訴え、ついに泣き出していた。
別の指揮官だが、同じ部隊で投票日前に「選挙ではどの候補が自衛隊の有利となるかを考えて」といい出す御仁もいた。後に下僚に聞くと
「陸自ではよくあるよ」
とのことであった。
念のためだが、どちらも10年以上前の話であり当人はすでに定年退職している。
このようなことが自衛隊内ではまかり通るのである。
これも「大東亜戦争」や靖国参拝をもたらす要因である。避けるべきとの世間の常識がない。だから抵抗なく使ってしまう。
もちろん、世間の常識をわきまえる自衛官もいる。「大東亜戦争」は使えないし、組織として靖国参拝はしてならないことを承知する自衛官も多い。
ただ、それは塀の中の常識と衝突する。それをいい出すと自衛隊内の“正義漢”の反発を食らう。一種の信心なので説得は受け入れない上、逆恨みを買う。
だから表立っていえないし、矯正も諦めている。開明派でも部下の無駄な反発を避けるために直接的にたしなめたりはせず、いわば風諫(ふうかん。遠まわしに忠告すること)にとどめるのである。