「常識的な隊員も多いのに」 陸自“大東亜戦争”SNS投稿を生み出した3つの組織病理、元中級幹部自衛官が解説する

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自衛隊の行動が問われている。陸上自衛隊第32普通科連隊がSNSで「大東亜戦争」という言葉を使ったのだ。発言を支える三つの要素とは。

“お理工さん”の天国

装甲車(画像:写真AC)
装甲車(画像:写真AC)

 ふたつ目は、“お理工さん”である。自衛隊、特に高級指揮官層の教育背景は理系に偏している。文系の知識に乏しい上、その文系知識を軽視する、“お理工さん”も多い。

 そのため「大東亜戦争」や靖国参拝の問題を認識できない。本来なら拒絶すべき内容をそのまま通してしまうのである。

 もともと士官層は理系に偏っている。大学卒で採用する士官を「A幹」と呼ぶが、その半分を占める防衛大学は9割が理系、残りの一般大卒も技術採用や薬剤採用を含むため7割理系である。

 入隊時は文系分野には暗い。そもそも基礎的・常識的な知識を欠くものが多い。

 例えば、実学としての英語は得意でも「大母音推移」や「グリムの法則」を知らない。そして英語が得意だと高確率で国語や歴史が怪しい。漢字も略字の「衛」や「権」「職」が読めない。沼津兵学校の話で出てくる「『安緑山』は唐の山でトテモトテモ高い」の水準である。

 法律関係では、そもそも民法と刑法の区別も怪しい人もいる。国際法の教務でも不告不理の原則を知らないで受講する。右派が政権擁護で持ち出す推定無罪も刑法限りであり、本来は法は推定を許すことを知らない。

 もちろん、理系出身者も過半は自ら成長する。おいおいには承知していくので文系知識を持たず軽視する、“お理工さん”にはならない。

 ただ、残り半分近くは、“お理工さん”となる。入隊以降に軍事や英語といった自衛隊内の偏頗(へんぱ。片寄って不公平なこと)な職業訓練だけしかやらないとそうなる。旧軍でいう『作戦要務令』にあたる本の暗記や、戦術や大砲の弾道のような兵書ばかりを読んでいる。後は英会話を頑張るだけである。

 そして、その方が出世する傾向にある。自衛隊の職業教育だけをやる方がコスパもタイパもよい。ライト・イズ・ライトも疑わないので“体育会社会”での受けもよい。安緑山先生のままで高級幹部になってしまう。

 そうなると部下が持ってきた「大東亜戦争」や靖国参拝計画を認めてしまう。それが

・世論の反発
・アジアの怒り
・世界の批判

をもたらすことを理解しないのである。

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